気象・海象を考慮した作業船運航管理支援システム「T-i Operation 船ナビ」を開発

最適な航路選定により効率的な施工計画・管理を実現

2018年7月20日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、海洋工事を実施する際、気象・海象を考慮して作業船を安全かつ効率的に運航するためのナビゲーションシステム「T-i Operation 船ナビ」を開発しました。

 離島や海外での海洋工事では、複数の作業船で数百キロもの遠方から建設用資材などを輸送する場合があります。船舶の運航は気象や海象の影響を受けやすく、運航ルートの設定や荒天時の運航可否の判断、避難港の利用は、船長の経験的な判断に委ねられています。また、作業所では工事に係る全ての作業船の運航状況がリアルタイムに把握できないことから、的確な施工計画の立案や施工管理が困難な状況でした。そのため、気象・海象の変化を考慮し、各作業船を取り巻く様々な状況に合わせた運航支援と常に作業船の運航状況を一元化して確認することができる仕組みが求められていました。

 そこで、当社は、気象・海象予報や船舶毎の性能、位置情報等を集約し、各船舶に最適な運航ルートを提供する作業船運航管理支援システム「T-i Operation 船ナビ」を開発しました。

本システムの特徴は以下の通りです。

  1. 1施工計画・管理
     本システムは、広大な運航海域内で、刻々と変化する気象・海象の時空間情報、船舶の位置、積込港・目的港・避難港の混雑状況などを考慮した上で、各船舶の性能に応じた最適ルートを選定し、Webを通じて提示します(図1、2参照)。対象船舶の全ての運航状況や資材積下予定日を把握できることから効率的な施工計画・管理が可能になり、生産性の向上へとつながります。
  2. 2運航の効率化
     運航海域内に避難港を設け、気象・海象予報に基づき、安全に運航できる海域の避難港へ立ち寄りながら、目的港に向けて最適な運航ルートを選定し、各船舶に提示することで、運航の効率化が可能となります。
  3. 3安全性の確保
     気象・海象予報、気象・海象の時空間情報と各船舶の航行速度を考慮しながら荒天範囲を避けた最適運航ルートを提示します。また、気象・海象が急激に悪化するような場合には、避難港の混雑状況と各船舶の船速を考慮して、船速の遅い船舶を優先し、現在位置から近い避難港を避難先として提示します。各船舶の状況にあった情報を詳細に提供することで、船長の状況判断を支援し、安全性の確保を図ります。

 本システムの適用効果確認にあたり、ある海域における過去7年分の気象・海象データを用いた土砂運搬船による運航シミュレーション(対象船舶数6隻、運搬距離約600km、避難港13港)を行い、船長の経験的判断による運航による土砂運搬量との比較・検証を行いました。

 その結果、本システムを適用した場合、1年間の土砂総運搬量は、経験的判断による運航と比較し、平均20%増加が見込め、荒天が予想される場合は避難港で待機し、安全性を確保しながら効率的に運航できることを確認しました(図3参照)。

 今後、当社では、本システムを国内外における海洋工事の設計・施工案件に適用を図るとともに、作業船以外の様々な船舶の運航管理への利用についても検討していく予定です。

  • 経験的判断による運航:「運航ルートの一部で荒天が予想される場合に、出港自体を見合わせる」として安全側で運航可否を判断
図1 システム概要図
図1 システム概要図
図2 ナビ表示画面例(推奨ルート表示)
図2 ナビ表示画面例(推奨ルート表示)
図3 検証事例における土砂総運搬量の比較結果
図3 検証事例における土砂総運搬量の比較結果
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