雷電磁界から電子機器を守る「雷電磁界バリア」技術を開発

2011年10月7日
大成建設株式会社

 大成建設(株)(社長:山内隆司)は、落雷時に建物内で発生する雷電磁界を内装部材によって減衰させることで建物内の電子機器の雷被害を防止・軽減するバリア技術を開発しました。IT化、高機能化が進むオフィスビルでは、特に有効かつ重要な落雷被害への対策となります。

 近年、サーバールームや中央制御室などに代表される情報機器類の高密度化・高集積化によって、建物の高機能化が目覚しく発展する一方で、雷による情報機器類の年間被害額は、報道によると1〜2千億円とも言われています。これは建物が高機能であるほど、その被害は大きく、サーバールームや建物機能を維持する諸室の機能停止や低下は、BCM(Business Continuity Management)の観点からも大きく影響を及ぼします。
落雷被害の原因となっているのは、情報機器等にかかる異常電圧です。弊社では、これまで総合的に定量化し評価できなかった落雷時に建物構造や接地系統に流れる雷電流をコンピュータ上でビジュアルにシミュレーションできるシステムを、2007年に(株)サンコーシヤ(社長:伊藤眞義)と共同で開発 ※関連情報参照 しました。これにより、ビル内の安全な雷保護領域の明確化や重要諸室の最適配置計画、雷保護装置(SPD)の最適設計を可能とし、個々の建物に即した実効性の高い内部雷保護対策が実現できるようになりました。
さらに弊社では、部屋単位で落雷被害を防ぐ「雷電磁界バリア」技術(特許出願済)を開発しました。本技術は、建物床構造部材(鉄筋やデッキプレート)と建物の内装の下地に使われる軽量鉄骨を通常よりも緊密かつ等間隔の格子形状に配置し、それぞれが電気的に等電位になるよう接続した構造です。バリアに流れる雷電流を分散させることによって発生する電磁界を減衰させると共に、発生した電磁波同士が打ち消す効果が得られ、実大のモデルルームによる実験では、部屋内部への雷電磁界の侵入を、一般の内装構造に比べて5分の1のレベルに抑えられることを確認しています。一般に落雷を受けた建物には、1000A/m(アンペア/メートル)程度の強さの電磁波が発生すると言われています。一方、建物内の電子機器に悪影響を及ぼすと言われている直流磁界は400A/mであり、本バリアによってその半分のレベルにまで減衰できることが実験に基づいたシミュレーションで明らかになっています。
また、コスト面では一般的な材料である軽量鉄骨の増量分だけが増額となるだけの非常に安価な方法です。
大成建設では、開発済のシミュレーションにバリア技術を併せた「雷保護技術トータルシステム」により雷害のトータルソリューションを提供し、BCMの観点から先端生産・研究施設、事務所、病院、データセンター等の建物全般に安全・安心を提供するため積極的な技術展開を図っていく所存です。