RC造建築物の耐震性向上技術「T-HR構法」の汎用性を向上

建築技術性能証明を取得し、建築物の適用範囲を拡大

2022年10月26日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2021年に開発した鉄筋コンクリート造(以下、RC造)建築物の耐震性能を向上させる技術「T-HR構法」について、柱梁の架構状況に応じて2種類の構法(図1参照)で対応可能とすることで汎用性を向上させ、この度の(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明の取得により、超高層建築物から一般建築物まで様々な規模や用途の建築物への適用を可能としました。

 一般的なRC造建築物の構造設計では、耐震性を確保するため、梁の端部に応力を伝達し、柱梁接合部での塑性ヒンジ※1の回転変形によって地震エネルギーを吸収することで接合部の損傷を防ぐ仕組みが適用されています。しかし、大地震による過大な変形が建築物に生じると、塑性ヒンジが回転変形する限界を超え、柱梁接合部の内部にまで損傷が進展する恐れがあり、大地震後に建築物の継続利用や早期復旧を行うためには、柱梁接合部での損傷を避ける必要があります。

 そこで当社は、梁端部の梁主筋の太さ、強度、本数を変化させ、大地震時に発生する塑性ヒンジの位置を柱面から梁中央側に移動させる方法(ヒンジリロケーション、図2参照)により、接合部に生じる損傷を防いで耐震性を向上させる技術「T-HR構法」を開発し、既に超高層建築物(高さ60mを超える建築物)へ適用しています。そして、この度、柱梁の架構状況に応じて適用できる従来構法に新たな構法を加え、建築技術性能証明を取得することで、より幅広い建築物への対応を可能としました。

 「T-HR構法」の建築技術性能証明取得により得られる効果は以下のとおりです。

  1. 1

    幅広い規模・用途の建築物に適用可能
    高層~低層建築物(高さ60m以下の建築物)にも適用可能となり、幅広い規模や用途の建築物に対して耐震性能を向上させることができます。

  2. 2

    多様な施工方法に対応可能(図1参照)
    本構法では、以下に示す2種類のヒンジリロケーション構法を適用し、多様な施工方法に対応が可能となり短工期化を図れます。

    1. aスリーブタイプ
      鉄筋継手を用いて梁端の主筋を梁中央区間よりも太径や高強度とする方法です。柱の間隔(スパン)が長いなど梁の端部で鉄筋を接続する施工に適しています。
    2. b

      カットオフタイプ
      梁端区間の主筋本数を増やして対処する方法で、スパンが短い場合に梁の中央で鉄筋を接続する施工に適しています。

 今後、当社は、安全安心で耐震性に優れた高品質なRC造建築物を提供するため、様々な規模や用途の建築物に対して本構法の適用を積極的に推進してまいります。

図1 本構法の概要(適用架構例、配筋状況)
図1 本構法の概要(適用架構例、配筋状況)
図2 大地震時の変形状態
図2 大地震時の変形状態
  1. ※1

    塑性ヒンジ: 引張側の主筋がすべて弾性限界を超えた後に耐力を保持しながら自由に回転できる状態