布製ダクトによるクリーンルームシステム「T-Flexible Cleanroom Membrane」を開発
軽量・高性能なダクトを用いて、安全性向上、コスト低減、省エネを実現
2022年10月24日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は半導体や電子部品、精密機器などの工場のクリーンルームに導入されているパネル型塵埃除去フィルタ(HEPAフィルタ相当)の代替方式として、多孔質膜の布製ダクト(以下、メンブレンダクト)を用いたクリーンルームシステム「T-Flexible Cleanroom Membrane」(*Membrane:メンブレン=膜) を開発しました。本システムの適用により、安全でローコスト・省エネルギーなクリーンルームの構築が可能となります。
工業用クリーンルームでは、製品過程で求められる清浄度(電子・精密部品工場レベル:クラス10,000程度)を確保するため、施設条件に対応した空調循環システムを導入しています。(表1参照)従来システムでは、天井内にダクトや高性能フィルタ(HEPAフィルタ)とファンが一体となったFFU(ファンフィルタユニット:約40kg/台)のほか、天井材など多数の部材が設置されており、吊荷重が大きくなることへの対応のため、コスト増加に繋がっていました。また、大地震時には天井に設置した部材などの落下により、人的、物的損害を受けるリスクや、さらにダクトの長さや吹出口での圧力損失の影響により、送風ファンの大きなエネルギーロスに繋がってしまうなどの課題がありました。
そこで当社は、従来から空調設備などに使用され除塵と吹出し口を兼ね備えたメンブレンダクトに着目し、除塵性能が高く圧力損失の少ない高性能ろ材の使用に加え、クリーンルームに適用可能な製作上の工夫を施すことにより、HEPAフィルタ相当の性能を有する軽量で高性能なメンブレンダクトを用いたクリーンルームシステム「T-Flexible Cleanroom Membrane」を開発しました。(写真1、表1参照)
「T-Flexible Cleanroom Membrane」の特徴は以下の通りです。
- 1
天井への設置機材の軽量化による安全性向上とコスト低減
ダクト本体の他、天井に設置される設備機器や天井部材も軽量になるため、大地震時に設置機材などの落下による人的・物損リスクが軽減され、安全性が向上します。
また、軽量化によりダクト他機材の天井への設置を容易に行えるため、建設工事の省施工化とイニシャルコスト低減を実現できます。さらに、軽量な本ダクトを用いて、既存工場のリニューアルによる簡易クリーンルーム構築も可能となります。(表1参照) - 2
低圧力損失による省エネ化を実現
従来のパネル型HEPAフィルタに比べダクト本体の圧力損失が50%以下に抑制されるため、送風ファンの動力を低減することが可能となり、クリーンルーム稼働時の省エネ化を図ることができます。(図1参照)
今後、当社は、新築建物だけでなく既存建物でのクリーンルーム構築に際して、安全性向上とコスト低減の実現を可能とする、軽量かつ高性能なメンブレンダクトを用いたクリーンルームシステム「T-Flexible Cleanroom Membrane」を積極的に提案してまいります。