地盤加熱型の微生物浄化技術「T-SoilReme HeatBio」の効果を実汚染地盤で検証

難透水層及び帯水層におけるVOCsの濃度低減を促進し、浄化期間を短縮

2022年9月15日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、地盤を加熱することにより、揮発性有機化合物※1(以下、VOCs)で汚染された難透水層(粘土・シルトなど)から帯水層中の地下水にVOCsを抽出し、地盤内の微生物を活性化させて浄化する原位置浄化技術「T-SoilReme HeatBio」(図1参照)を2020年に開発しており、この度、本技術を環境省の受託実証試験※2(写真1参照)において実汚染地盤に適用し、その効果を検証しました。

 当社は、これまでVOCsで汚染された土壌や地下水に対して、浄化材や空気などを地盤に供給して浄化菌を活性化させる原位置浄化技術を多数実施してきました。しかし、地盤の温度は浄化菌が活発に活動できる温度より低い20℃前後である場合が多く、浄化期間が長期化する傾向にありました。また、難透水層には浄化材や空気などを供給することが難しいため、地下水汚染再発の原因となるVOCs汚染土壌が残存するなどの課題がありました。
 そこで当社は、VOCs汚染地盤に設置した電極※3を用いて土壌中に電流を流すことにより、地盤を加熱して難透水層に存在するVOCsを帯水層中の地下水へ脱離させる本技術を開発し、この度、実汚染地盤での実証試験を通じて、浄化菌が活発に活動する最適な地盤温度に加熱することで、VOCsの汚染濃度低減を促進し、浄化期間を短縮できることを確認しました。

 実証試験で確認された「T-SoilReme HeatBio」の浄化効果と特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    難透水層のVOCsを浄化(図2参照)
    従来の原位置浄化では対応が困難であった難透水層にあるVOCs含有量が加熱により90%低減され、VOCsの溶出量は基準値以下となりました。

  2. 2

    浄化期間を短縮(図3参照)
    地盤温度を30℃程度に加熱することで、浄化菌によるVOCs分解速度が2倍以上向上し、浄化期間を60%程度短縮できました。

  3. 3

    低コスト・低環境負荷を実現
    掘削除去による浄化対策と比較※4した場合、本技術ではコストで20%程度安価となり、CO2排出量も44%程度低減できることを確認しました。

 今後、当社は、実証試験で得られた知見を基に本浄化技術の設計手法を整備するとともに、原位置における浄化対策技術として積極的に適用してまいります。

図1 本技術の概要
図1 本技術の概要
写真1 実汚染地盤の実証試験状況
写真1 実汚染地盤の実証試験状況
図2 難透水層地盤の汚染濃度低減(対象物質:1,2-ジクロロエチレン)
図2 難透水層地盤の汚染濃度低減
(対象物質:1,2-ジクロロエチレン)
図3 温度による浄化速度の違い(現地地下水を用いた分解試験結果)
図3 温度による浄化速度の違い
(現地地下水を用いた分解試験結果)
  1. ※1

    揮発性有機化合物:
    揮発性が高く人体に有害な溶剤など、地盤に漏洩すると地下水を介して広く拡散する汚染物質であり、トリクロロエチレンやベンゼンなど11種が環境規制物質に規定

  2. ※2

    環境省の受託実証試験:
    環境省が公募する「令和3年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査結果」に選定され、実汚染地盤において実証試験を実施

  3. ※3

    当社が開発した鋼製の打ち込み式の電極兼用注入管(図1参照)

  4. ※4

    浄化対策を比較:以下に示す同一条件での試算結果
    対策面積:100m2、対策深度:GL-2~-9m(帯水層における地下水汚染)、GL-9~-10m(粘土層における土壌汚染)、汚染状況:地下水、土壌いずれも1,2-ジクロロエチレンが基準値の10倍濃度で存在