特定小電力無線を活用した計測システム「MSEN」を開発

歪データを効率的に取得し、インフラ構造物の長寿命化に貢献

2022年9月5日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、立山科学株式会社(社長:水口勝史)と共同で、鋼材や鉄筋などに設置した歪センサに送信機を接続し、920MHzの特定小電力無線※1を活用して、構造物の歪データを受信機に転送する計測システム「MSEN(エムセン)」を開発しました。本技術の適用により、150mまでの通信距離で200台までの送信機と通信でき、最大で5年間継続してデータを取得することで、インフラ構造物の状態を随時評価し、長寿命化に貢献することが可能となります。

 現在、トンネルや橋梁等の多くのインフラ構造物で老朽化が進んでおり、構造物の長寿命化を図るためには、調査診断を効率よく行う事が重要となってきます。そのため施工時から供用開始後において構造物の変位や変形を継続して把握することが、構造物の状態を評価する上では重要な指標となってきます。従来の計測システムでは有線方式で計測することが主流でしたが、設置時の配線処理が煩雑であり、計測時の配線切断等が懸念され、また、メンテナンスにも手間がかかることが課題となっていました。一方、無線方式による計測では、通信距離が短く、通信可能なセンサ数が少ないなどの制限や高価な製品が多いという理由などから、装置の普及が滞っている状況となっていました。
 そこで当社と立山科学は、高速、長距離かつ多数センサの通信に対応でき、長期間にわたり計測可能で、安価な無線計測システム「MSEN」を開発しました。また、室内での載荷試験、暴露試験およびトンネル工事現場において本システムの性能を検証し、その有効性を確認しました。

「MSEN」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    無線を活用して効率的にデータ取得が可能
    920MHz帯の特定小電力無線を使用するため、従来より通信速度が速く、最大150mまでの通信距離で計測できます。また、最大200台の送信機と接続し、計測間隔0.05秒まで対応でき、効率的なデータ取得が可能です。

  2. 2

    長期間にわたり計測が可能
    個々の送信機には計測用バッテリーとしてリチウム電池を最大5本搭載でき、1時間毎のデータ計測で最大5年程度まで駆動させることが可能です。

  3. 3

    汎用的で安価な装置を用いて受信機の通信方式に関わらずデータ計測が可能
    トンネルや橋梁などの現場条件に応じた、汎用性が高く低コストな送受信機を用いて、受信方式(固定式・移動式)に関係なく、センサに接続した送信機からデータを転送して計測することが可能です。

 今後、当社と立山科学は、トンネルや橋梁などのインフラ構造物の長寿命化を図るツールとして本技術を建設工事に展開するとともに、特定小電力無線の送信機に対応できる計測センサの種類と台数の増加を図り、工事現場での計測条件に応じたより使いやすい無線計測システムの構築に取り組んでまいります。

図1 「MSEN」の概要
図1 「MSEN」の概要
写真1 送信機と受信機
写真1 送信機と受信機
 写真2 トンネル現場での性能確認
写真2 トンネル現場での性能確認
  1. ※1

    920MHz帯の特定小電力無線:
    業務用トランシーバーなど免許が不要な無線通信のことで、特に920MHz帯の特定小電力無線は、従来から使用されている400MHz帯と比べて通信速度が速く、2.4GHz帯と比べて通信距離を確保しやすい特長がある。