木材の難燃化を実現する塗料「難燃WOOD塗るだけ」を開発
建築物の防火性能の向上と木材の利活用促進に寄与
2022年5月23日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、木材の表面に透明な塗料を塗るだけで、火災時に炭化断熱層を形成して木材の難燃化を実現する、「難燃WOOD塗るだけ」を開発しました。木材の意匠性を損なわずに難燃化を実現することで、建築物の耐火性能の向上と木材の利活用促進に寄与します。
屋内で発生する火災の多くは、出火後に室内の可燃物や内装材などへの引火により進行します。そのため、建築基準法では建物の規模・用途・構造などの条件に応じて、発生する熱や煙が避難の妨げにならないように、壁や天井に「内装制限※1」を設け、燃えにくい材料の使用を義務づけています。一方、脱炭素化社会の実現に向けた方策として、国産木材資源の有効活用の観点から木材利用が促進されており、内装制限に適合した燃えにくい木材のニーズが高まっています。一般的に木材を内装制限に適合させるためには、大掛かりな装置を用いて、木材に難燃薬剤を含浸させて「含浸型難燃木材」を製造しますが、この方法はコストが嵩むことに加え、含浸させる装置のサイズ以上の木材には適用できないことが大きな課題となっていました。また、構造強度と木材特有の意匠性を併せ持つCLT※2等の大きなサイズの木材には、含浸処理した難燃木材を重ねて貼る方法などがありますが、コストや施工手間が増加し、木材の意匠性が損なわれてしまうことも課題の一つとなっていました。
そこで当社は、火災時に高温となり燃焼の影響を受けやすくなる壁や柱等の木材の表面に透明な塗料を塗るだけで、意匠性を損なわずに炭化断熱層を形成して木材を準不燃材料※3に変える「難燃WOOD塗るだけ」を開発しました。本塗料は性能評価機関※4において、準不燃材料(材質:スギ材、不燃時間:10分)の性能評価試験に合格しています。
「難燃WOOD塗るだけ」の特徴は以下のとおりです。(表1、写真1、2参照)
- 1
木材の意匠性を確保し、低コストで難燃化を実現
本塗料は、透明で塗布後も木目を視認することができるため、木材の意匠性を確保した上で、従来の含浸型難燃木材と比較して1/3~1/2程度のコストで木材を準不燃材料に変えることができます。 - 2
木造部材の寸法や新築・既存建物に関わらず適用することが可能
部材表面に塗布して施工するため、木材の大きさに左右されず、CLTのような大きな木材にも容易に適用できます。また、予め薬剤を含浸する装置の中に木材を入れて製造する必要がないため、新設だけでなく既存建物にも適用できます。 - 3
白華現象を大幅に低減し、木材の美観を保持
従来の含浸型難燃木材では、薬剤が外気などと反応して木材表面に染み出して白く汚れる白華現象が生じる場合がありますが、本塗料は表層に形成される薄い塗装膜が難燃効果を発揮する仕組みのため、染み出して白華現象を引き起こす可能性が少なく、木材の美観を保持することができます。
比較項目 |
本塗料(難燃WOOD塗るだけ)塗布木材 |
従来の含浸型難燃木材 |
下地(木造部材)木目の視認性など |
下地に直接塗布するのでかさばらず、 |
下地に重ね貼りするためかさばり、下地の木目が見えなくなる |
材工コスト比較 |
1/3~1/2程度 |
1 |
CLTなどの大きな木材への適用 |
塗布するだけなので、大きさに関わらず適用可能 |
大きな木材への薬剤含浸は装置サイズの問題で非現実的 |
既存建物への適用 |
既存部材に塗布するだけでよいため、施工性、経済性などが良い |
既存内装材への重ね貼り、貼替えが必要で手間がかかり、コスト高 |
白華現象などの発生状況 |
白華などは発生しにくい |
白華で汚損を生じる場合がある |
現場施工 | 可能 | 不可(工場で含浸) |
工場施工 | 可能 | 可能 |


- ※1
内装制限:
建築基準法において、火災の拡大や煙の発生を遅らせるための規制で、壁や天井等の仕上げ材を火災時に燃えにくい材料にする - ※2
CLT:
Cross Laminated Timberの略で、ひき板を並べて繊維方向が直交するように接着した板状木材 - ※3
準不燃材料:
加熱開始後10分間は、燃焼しない、防火上有害な変形・溶融・き裂その他損傷を生じない、避難上有害な煙またはガスを発生しないという性能を満足する材料 - ※4
性能評価試験:
コーンカロリーメーターを用いて、材料加熱時の燃焼ガス濃度から発熱量を計測して不燃性能を評価する試験