木材のみで耐火被覆する、準耐火構造の鉄骨柱部材を開発
製法と樹種による制限がなく、建設エリアでの地産地消を実現
2022年5月19日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、木板のみで鋼管柱を覆い45分間の準耐火性能を発揮する準耐火構造部材を開発し、この度、国土交通大臣認定を国内で初めて取得しました。また、本部材は製法や樹種の制限がないため、建設エリアにおける木材の地産地消の促進を図ることが可能です。
近年、循環型社会や脱炭素社会など持続可能な社会を実現するため、建築物への木材の利用促進に注目が集まっています。また、2021年には「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、木材利用促進の対象が公共建築物から建築物全般へ拡大したことで、より多くの建築物への木材利用が期待されています。
建築物に適用される木材を使用した防耐火部材の中には、火災鎮火後も建物が崩壊しないことが求められる「耐火構造」と、一定の耐火性能を持った「準耐火構造」があります。(各構造の対比は表1参照)
しかし、これまで準耐火構造が要求される準耐火建築物※1に対して、耐火建築物に求められる構造部材を使用することが多く、準耐火建築物での対策としては、過剰なスペックとなっていたため、準耐火建築物に適合し、安価で施工性に優れた構造部材のニーズが高まっていました。
これまで当社は、持続可能な社会の実現を目指すべく、木材の利活用を推進する様々な研究・開発に取り組んできました。今回、その過程で得られた、火災時に木材が炭化断熱層※2を形成するという知見に着目し、木材だけで鋼管柱を耐火被覆する準耐火構造部材を開発しました。
今回開発した準耐火構造部材の特徴は以下のとおりです。
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木材のみで容易に耐火被覆と現場施工ができ、コストの削減も可能(図1参照)
鋼管柱の周囲にスギ、ヒノキなどの木板を、接着剤を使用せずにビスだけで緻密に組み立てて覆うことで、必要な耐火性能を確保します。耐火構造部材のような燃え止まり層※3の設置が不要で、木板だけを使用し現場で容易に施工ができるため、コストを抑えて一定の耐火性能を確保することが可能です。 - 2
木材の製法や樹種などの制限がなく、意匠性の向上と地産地消の木材利用が可能
柱部材の耐火被覆と仕上げを兼用する木板は、製材、集成材、単板積層材(LVL)、直交集成板(CLT)などの製法や、スギ、カラマツ、ヒノキなど樹種による制限はありません。そのため、好みの材料を選定することができ、意匠性の向上が図れ、建設エリアでの地産地消の木材利用も可能です。
今後、当社は本技術を準耐火建築物に対して積極的に適用し、低コストで意匠性に優れた木質空間を提供していくとともに、当社開発の耐火被覆部材「T-WOOD®️TAIKA」のラインナップ拡充を図り、建築物での木材の利用促進を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
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準耐火建築物:
耐火建築物の条件を満たしていないが、それに準じた耐火性能がある建築物のことで、住宅や工場・倉庫などの一部の壁、柱、床、梁、階段、屋根に対して倒壊を防ぐ時間が定められており、通常火災での柱部材は45分に設定されている - ※2
炭化断熱層:
火災時に木材が燃焼してできる熱を通しにくい炭化した層 - ※3
燃え止まり層:
仕上げ材と構造材(芯材)の間で燃焼を停止させる層