汎用建機装着型のダム堆砂処理装置「T-A Dredger」を開発

小規模・軽量な装置を用いて水中の堆砂を効率的に分別吸引

2022年3月31日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は汎用建機に付属部品として装着し、ダム湖から吸引浚渫した堆砂をパイプラインで圧送するダム堆砂処理装置「T-A Dredger(ティー・エー・ドレッジャー)」(写真1参照)を開発しました。小規模・軽量な本装置を汎用建機に装着することにより、水深に関わらず水中の堆砂を効率的に分別吸引することが可能となります。

 現在、ダム管理を行う上で、ダム湖の堆砂処理は貯水容量を長期間にわたり確保し、インフラの長寿命化を図るための重要な課題となっています。このような背景から、当社では、2016年度から国立研究開発法人土木研究所とダムからの土砂排砂技術に関する共同研究※1に取り組んできました。
 そして、当社は水中の堆砂内に混在する沈木・巨石・塵芥等の異物や礫分を取り除き、細粒分のみを浚渫して圧送する技術について設計・仕様検討を進め、この度、ダム堆砂処理装置「T-A Dredger」を開発しました。また、本技術について国土交通省中部地方整備局美和ダム貯水池において実証実験を行い、その性能を確認しました。

写真1 T-A Dredgerの建設機械への装着状況
写真1 T-A Dredgerの建設機械への装着状況

 本装置が備える基本機構、浚渫方法および特徴は以下のとおりです。

【装置の基本機構】(図1参照)

  1. スクリーン選別吸引機構
    装着部品先端の吸引部に回転式スクリーンを搭載し、巨礫・木材等の異物を水中で選別除去し、高濃度土砂水のみを吸引

  2. 吸引部清水供給機構
    吸引口を二重管構造とし、外管に清水のみを流入させ、内管先端部から土砂吸引する際に常時清水を供給することで土砂の吸引過多による配管閉塞を防止

  3. 土砂濃度コントロール機構
    スクリーンドラムの回転数を可変式にして、堆砂の土質条件に応じてドラム表面の切削チップで土砂取り込み量を調整し、土砂濃度を制御

図1  T-A Dredgerの基本機構
図1  T-A Dredgerの基本機構

【浚渫方法】(図2参照)
 上記の基本機構を活用し、以下の手順で効率的に堆砂を浚渫、処理します。

  1. 1

    建設機械先端部の本装置スクリーンを回転させながら、堆砂部に挿入

  2. 2

    切削チップで堆砂を崩し、回転スクリーンにより異物を除きながら、高濃度な土砂水だけを吸引

  3. 3

    吸引管先端に清水を供給して高濃度土砂水を希釈しながら処理し、パイプラインで圧送

図2  T-A Dredgerの浚渫方法
図2  T-A Dredgerの浚渫方法

【特徴】

  1. 1

    ポンプ船など浚渫のための大規模な仮設備が不要
    本装置を汎用建機に装着する浚渫方法により、従来のポンプ船による浚渫などに付随する大規模な仮設備が不要となります。

  2. 2

    小型ポンプ仕様でも従来工法に匹敵する浚渫能力を実現
    本装置はその機構により高い浚渫効率が発揮され、実証実験の結果、従来の浚渫用ポンプの1/3程度の出力性能をもつ小型ポンプ(出力55kW、吐出口径200mm)でも従来工法と同等の50m3/hの浚渫能力を確認しています。

  3. 3

    本装置を装着する建機の変更により、あらゆる水深の浚渫に適用可能(写真2参照)
    本装置は陸上や台船上に設置したバックホウや当社が独自開発した水中作業機「T-iROBO® UW※2」等の汎用建機に取り付けて堆砂を浚渫でき、また、ダム湖の貯水位に応じて本装置を装着する建機を代えることで浅水域から大水深まであらゆる水深に適用できます。

写真2  水深に応じた本装置の建設機械への装着例
写真2  水深に応じた本装置の建設機械への装着例

 今後、当社は、ダム湖の堆砂処理において効率的な浚渫作業を実現するとともに、本装置をこれからのダム長寿命化を支える技術として展開してまいります。

  1. ※1

    共同研究の名称「吸引工法によるダムからの土砂供給(排砂)技術に関する共同研究」(実施期間:2016~2020年度)。土木研究所で開発中の吸引工法(潜行吸引式排砂管)に対して、当社は堆砂に含まれる沈木・巨石・塵芥等の吸引困難な物体の除去等の前処理手法を開発。

  2. ※2

    T-iROBO® UW:
    ダムのリニューアル工事などにおける水中作業を遠隔操作で行える作業機。台船から水底にシャフトを立て込み、シャフトを軸に建設機械が水中作業できるため、大水深でもダイバーなしで施工可能。