掘進しながら空洞の有無を連続測定できる「超音波式地山探査装置」を開発

空洞検知時は充填材を注入し、掘削による地山変形を防止

2022年3月22日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、シールドマシンを掘進しながら地山の空洞状況を非接触で連続測定できる「超音波式地山探査装置」(写真1参照)を開発しました。本装置の適用により、空洞の有無を確認しながら施工でき、空洞が検知された場合には充填材を即時注入し、掘削による地山変形を防止することが可能となります。(図1参照)

 都市部の地下にトンネルを建設する際に用いるシールド工法では、十分な安全性を確保するため、より高度な施工管理が要求されます。そのため、施工時に複数のモニタリング情報を取得して総合的に評価できるような仕組みを構築することが、工事関係者が施工状況や安全性を把握することに繋がり、また、工事区域周辺の人々に安心感を与える上で重要となっています。
 そこで、当社は掘削土量をリアルタイムに計測できるモニタリング装置※1とは別に、非破壊検査や医療分野で活用されている超音波センサーを利用して、シールドマシン外殻から地山までの距離を連続測定し、マシン上方の空洞の有無をリアルタイムに把握できる、地山探査装置を開発しました。また、本装置のシールドマシンへの実装にあたり、室内実験により適用範囲および測定精度を確認するとともに、実工事のシールドマシンに設置して性能を検証し、その効果を確認しました。

 本装置の特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    掘進しながら連続して測定可能
    本装置は、シールドマシン外殻から空洞を探査する従来の貫入式探査装置(写真2参照)のようにシリンダーを突出せずに、非接触で測定できることから、シールドマシンを停止させることなく掘進しながら連続して測定することができます。

  2. 2

    コンパクトな装備を低コストで実装可能
    非接触型の探査装置として従来から利用されている電磁波レーダー(写真3参照)は、非常に高価で大型なため、全てのシールドマシンに実装することは困難でした。本装置はコンパクトなうえ、電磁波レーダーの約1/2のコストで実装することができます。

  3. 3

    故障発生時に超音波センサーを安全に何度でも交換可能
    本装置の超音波センサーが故障した場合には、シールドマシン外殻にある測定孔を独自のスライド機構により閉塞することができるため、地山からの土砂流入を防止しながら、効率よく安全に交換することが可能です。(図2参照)

 今後、当社は本装置を積極的にシールド工事に導入し、掘進中に地山空洞の有無を総合的に判断して対処するとともに、他のモニタリング装置と併用することで、掘削土量による施工状況の把握を含めて地山変形防止に向けた管理技術として運用してまいります。

写真1 超音波式地山探査装置(新技術)
写真1 超音波式地山探査装置(新技術)
図1 地山探査装置による空洞確認時の施工手順
図1 地山探査装置による空洞確認時の施工手順
写真2 貫入型地山探査装置(従来技術)
写真2 貫入型地山探査装置(従来技術)
写真3 電磁波レーダー(従来技術)
写真3 電磁波レーダー(従来技術)
図2 超音波センサー交換手順
図2 超音波センサー交換手順
  1. ※1

    モニタリング装置:
    ベルコンスキャナ®、ドーリースキャナ®などのリアルタイム土量計測システムを示す。
    ・連続ベルトコンベア計測・管理システム「ベルコンスキャナ」を開発
    https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2017/170302_3716.html
    ・泥土圧シールド工事における掘削土量自動計測システム「ドーリースキャナ」を開発
    https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/211119_8564.html