RC造高層住宅用地震対策構法「TASS-Flex FRAME」を初適用
高性能な制振システムにより高層住宅の長周期地震動対策を実現
2022年3月9日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、高強度・小断面の柱、梁部材で構築した柔軟な骨組み構造に、連層壁※1とオイルダンパーを組み合わせた制振システムによる地震対策構法「TASS-Flex FRAME」を、地上23階建てRC造高層住宅に初適用しました。
今後発生が予想される南海トラフ地震では、東北地方太平洋沖地震を上回る地震動が想定されています。こうした巨大地震では長周期・長時間の揺れが継続するため、共振現象によって時間の経過とともに建物の揺れが増幅してしまう恐れがあります。共振現象による揺れの増幅を抑えるには、揺れのエネルギーを吸収する装置であるダンパーの設置が効果的です。しかし、高層住宅では建物の重量が大きいため揺れのエネルギーが大きく、またダンパーの設置スペースが少ないことから、揺れの増幅抑制に必要な台数のダンパーを設置することが難しいという課題がありました。
そこで、当社は、高層住宅に適した新しい地震対策構法「TASS-Flex FRAME」を2016年に開発し、2017年に大型振動模型実験による性能確認を経て、この度、本構法の初適用により、高付加価値な高層住宅を実現しました。
本構法の特長を以下に示します。
- 1
耐震性能を大幅に向上
高強度・小断面の部材で構築された柔軟な架構が免震構造のように地震の揺れを受け流すとともに、連層壁がオイルダンパーのエネルギー吸収効率を増幅します。解析結果では、巨大地震が発生した場合の建物頂部の揺れ幅を70cmから50cmへと大幅に低減することが可能となり、耐震性能の向上が図れます。また、性能の向上に伴い、柱や梁を小規模化することで、大きな開口を設けて優れた眺望を実現できます。 - 2
居住空間の有効面積を最大限確保
建物中央部の吹抜け空間の周囲に連層壁とオイルダンパーを集約配置しており、それ以外の柱や梁への補強は不要です。そのため、高層住宅の建築計画への影響を最小限に留め、居住空間の有効面積を最大限確保することが可能となりました。 - 3
安価な長周期地震動対策が可能
建物自身が柔軟に変形することができるため、免震建物のように免震層※2や特殊な装置を必要としません。また、連層壁によりオイルダンパーのエネルギー吸収効率を高めているため、本構法のオイルダンパー台数を従来の制振システムを用いた建物の半分程度とした場合でも高い耐震性能を得ることができます。そのため、同等性能を有する免震・制振建物よりも安価に長周期地震動対策を講じることができます。
今後、当社は、発生が懸念される巨大地震に対して安全・安心な居住空間を提供するため、本構法を用いた高層住宅の提案を積極的に行ってまいります。
- ※1
連層壁
建物中央低層部に複数層に渡り連続して配置されている壁で、地震や風により生じる横方向の力に抵抗 - ※2
免震層
地震の揺れが建物に直接伝わらないよう建物下部に設けられる空間