地下水流動を考慮した止水壁・浄化壁の配置設計支援システムを開発
短時間で多数の配置案を解析し最適な配置設計を実現
2022年3月4日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、汚染された地下水の拡散防止対策として、地下水流動シミュレーションと最適化アルゴリズムを組み合わせ、止水壁・浄化壁の配置設計を支援するシステムを開発しました。施工計画を策定する際、本システムを用いて短時間で千件を超える配置案を解析し、その結果を踏まえ汚染濃度分布や施工における制約条件を考慮した最適な配置設計の検討に適用することができます。
現在、汚染された地下水の敷地外への拡散防止対策として、地下水の流れを遮断する止水壁※1や、地下水を透過させて汚染物質を分解または吸着させる浄化壁※2などが用いられています。止水壁は低コストで確実な拡散防止効果を得られますが、地下水の流れを阻害するため下流側の地下水位が低下し、周辺地盤の沈下などが生じる可能性があります。(図1参照)
一方、浄化壁は地下水の流れを遮断しない点で有効な方法ですが、鉄粉や吸着剤などを充填して構築されており止水壁よりも高コストになるため、現状では止水壁と浄化壁を併用する方法が採用されています。また、これらの配置設計を行う場合、専門技術者が地下水の流れの方向や流速、施工条件などを考慮して複数の設計案を検討し、地下水流動シミュレーションなどの結果を基に、過度に地下水位低下などが発生しないよう周辺環境への影響が小さい配置を選定してきましたが、多大な労力と時間を必要としていました。
そこで、当社は地下水流動シミュレーションと汎用最適化アルゴリズムを組み合わせて、複数設計案を効率的に解析し、地下水流動を考慮した止水壁・浄化壁の最適配置を自動的に導き出す新しい設計支援システムを開発しました。汚染サイトを想定したモデルを用いて本システムの有効性を検証した結果、従来手法よりも効率よく最適な配置案を求められることを確認しました。
本システムの特徴は以下のとおりです。(図2、図3、表1参照)
- 1
自動で迅速に止水壁・浄化壁の最適配置を選定可能
止水壁による下流側の地下水位低下を目標値以下に抑えつつ、施工コストが最小となるような止水壁と浄化壁の設置について、最適な配置を自動で迅速に選定することが可能です。 - 2
様々な設計に適用可能な汎用性の高い最適化アルゴリズムを採用
本システムでは汎用性が高い最適化アルゴリズムを採用し、止水壁・浄化壁の配置設計以外にも様々な地下水対策工の設計にも適用することが可能です。
今後、当社は、本システムを多種多様な汚染された地下水の拡散防止対策として適用を図り、止水壁・浄化壁の迅速で合理的な配置設計に役立てて参ります。



表1 上記事例に対する従来法と本システムの解析結果比較
項目 |
従来法 |
本システム |
解析時間 |
10ケース10時間 |
1400ケースを20分 |
浄化壁の延長 |
210m |
75m |
- ※1
止水壁 : 矢板等を線状に設置して地下水の流れを止水することにより、汚染物質を含む地下水の敷地外への流出・拡散を防止する方法。
- ※2
浄化壁 : 汚染物質を含む地下水を通水性の浄化壁に透過させ、この透過の過程で汚染物質を分解または吸着させ、浄化された地下水のみを敷地外に流出させる方法。地盤内を壁状に掘削した内部に浄化剤を充填した壁を構築する。