建設機械搭載型AIを用いた人体検知システム「T-iFinder」を開発

検知精度高度化により様々な施工環境での安全性を向上

2022年2月16日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建設機械搭載型人工知能(AI)を用いて、人体を高精度に検知するシステム「T-iFinder」を開発しました。また、本システムを導入した複数の建設機械を様々な施工環境で延べ3,000時間にも及ぶ実証実験を実施し、確実な人体検知、建設機械の緊急停止および警報機能の自動作動状況からその安全性を確認しました。

 当社が推進している建設機械の無人化・自動化技術の開発において、人と建設機械の接触を防止するシステムは必要不可欠な安全対策技術の1つであり、人体を検知すると同時に確実に安全装置等が機能することが必要です。従来の人体検知には、ICタグや無線センサー等による方法が用いられていますが、ICタグを所持していなければ人検知は出来ず、無線センサーについても設置条件よって、人や物に過敏に反応してしまう場合などがありました。また、自動車等で既に実用化されているAIを活用した画像処理技術を用いて、人体を検知するシステムの開発にも取り組んできましたが、人体と誤検知しやすい資機材や塵埃が舞うような視界が悪い状況下での作業環境では人体検知が困難な場合があり、検知精度が低下するという課題がありました。

 そこで当社は、建設機械の無人化・自動化に欠かせない安全対策技術として、トンネル・地下工事、トンネル以外の土工事などの明かり工事および建築工事などから取得した現場作業員の映像データを基にデータベースを構築し、施工環境に合わせて機能する複数種類の建設機械搭載型AIを用いた高精度な人体検知システム「T-iFinder」を開発しました。

 本システムの主な特徴は以下のとおりです。(写真1、2参照)

  1. 1

    建設機械搭載型AIを用い、カメラとの連動による人体検知と同時に建機動作を制御
    建設機械搭載型AIは、現場での使いやすさと多様な機種の対応を可能とするため、小型ケースにコンパクトに格納され、最大3台のカメラと同時接続して画像データ処理を行います。本システムは、施工環境で収集・蓄積されたデータベースを個別に保有しており、クラウドなどを介さずにその場で処理することが可能です。瞬時の映像を基に人体を検知し、接触の危険性を判断すると建設機械の自動減速・停止や警報発出等の制御を同時に行うことができます。また、現場固定カメラを活用し、立入禁止区域の監視や建設機械の運転席から視認しにくいエリアの確認、ドライブレコーダーなどにも適用することが可能です。

  2. 2

    施工環境に応じて深層学習を重ねたAIにより、最適な人体検知システムを構築
    施工環境に応じて、AIを用いて検知すべき人体と誤検知しやすい資機材等の画像を収集してデータベース化を図り、このデータベースを基に施工環境に合わせて人体検知を実施するシステムを構築することが可能です。そのため、新規導入する現場でも最適な人体検知システムを提供することができます。

 今後、当社は建設現場において本システムの検証を継続させ、開発済の「T-iROBO®※1などを始めとする多様な無人化・自動化建設機械に適したAIおよび遠隔サポートなどの検知精度高度化に関する技術開発を進めていきます。また、高精度な人体検知技術の確立を早期に実現するとともに、建設現場の更なる安全性向上に努めてまいります。

写真1 本システムによる人体検知イメージ
写真1 本システムによる人体検知イメージ
写真2 本システムを搭載した実証機の一例(左:油圧ショベル、中:蓄電池機関車、右:電動油圧ショベル)
写真2 本システムを搭載した実証機の一例
(左:油圧ショベル、中:蓄電池機関車、右:電動油圧ショベル)
  1. ※1

    T-iROBO®
    人とロボットの協働を目的として、大成建設が独自開発した建設作業用ロボットシリーズを示す。建設機械に搭載するシステムには、振動ローラーが施工位置を把握しながら、自ら判断して自動で転圧作業を行う転圧走行無人化施工システム「T-iROBO® Roller」、割岩したい岩を指定するだけで建設機械が自ら判断して岩に接近し、自動で破砕する割岩無人化施工システム「T-iROBO® Breaker」、ピット内の土砂と積込機を認識して自動的に掘削積込を行う無人化施工システム「T-iROBO® Excavator」などがある。