プロジェクションマッピングを利用した墨出し技術「T-iDigital MARKING」を開発

原寸大図面の高精度な床面投影により現場作業の生産性を向上

2021年12月27日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建設現場でプロジェクションマッピングを利用して設計図面等を床面へ高精度に投影した原寸大図面から墨出しを行う技術「T-iDigital MARKING」を開発しました。本技術の導入により、床面に投影した墨出しに必要な情報を元に専門知識の有無に関わらず必要最小限の人員で正確かつ迅速に作業を行えるため、現場作業の生産性を大幅に向上させることが可能となります。

 建設工事では、各工程の最初に設計図や施工図等に記載された様々な基準線、設備器具の取り付け位置などの寸法情報を、実際の施工現場に原寸大で書き出す「墨出し」を行います。従来の墨出しは、建築仕上(壁・床・建具)工事や設備工事毎に複数の専門職員や作業員が墨出し場所を事前に測量した上で、各工事に必要な基準線や設備器具の取り付け位置などを計測し、マーキングしていました。しかし、これらの作業では測量ミスや設計変更後の情報が反映されていない図面の使用などの人為的な誤りのほか、工事毎に別々に墨出しを行うため手待ち時間が発生するなど、作業の正確さや効率に課題がありました。

 そこで、当社は、プロジェクションマッピングを利用して建物の床面に原寸大で投影した図面を元に、作業員が直接マーキングすることで墨出しを正確かつ迅速に行うことができる技術「T-iDigital MARKING」を開発し、実証試験によりその有効性を確認しました。(写真1参照)

 本技術の特長は以下の通りです。

  1. 1

    歪みが発生しない補正技術により高精度の映像を確保
    プロジェクターで投影された映像に生じる歪みを高精度に補正できる「映像補正技術」を独自に開発しました。その結果、床面に正確な原寸大図面の投影が可能となります。2m離れたプロジェクターから投影した場合、±2㎜以内の高精度な映像を確保することができます。

  2. 2

    プロジェクター自動姿勢制御装置により歪みのない映像を投影
    投影される図面の映像はプロジェクターが少しでも傾くと大きく歪むため、プロジェクターの姿勢を傾斜角0.001度の精度で制御する「自動姿勢制御装置」を開発・導入しています。その結果、本装置にプロジェクターを固定するだけで歪みのない原寸大図面を投影することが可能となります。(写真2、3参照)

  3. 3

    墨出し作業を効率化
    本技術の導入により、これまで重複していた墨出し場所の事前測量作業が一度に実施できるだけでなく、建築仕上・設備工事などの墨出しに必要な総合的な情報を投影することで、専門知識の有無に関わらず最小限の作業員数により各種作業を同時に行うことが可能となります。(写真4参照)

 今後、当社は、土木・建築分野のすべての建設工事で必要となる墨出しにおいて、生産プロセスDX化による生産性向上に向けた取り組みの一環として、本技術を積極的に適用してまいります。

写真1 プロジェクションマッピングによる施工図面の投影状況
写真1 プロジェクションマッピングによる施工図面の投影状況
写真2 自動姿勢制御装置に固定したプロジェクター
写真2 自動姿勢制御装置に固定したプロジェクター
写真3 自動姿勢制御システムによる補正前後の投影状況
写真3 自動姿勢制御システムによる補正前後の投影状況
写真4 墨出しの作業状況
写真4 墨出しの作業状況