低騒音・低振動で地盤密度を増大させる液状化対策工法「TS-improver®」を開発

太径改良杭造成により杭本数削減と施工品質確保を実現

2021年12月16日
大成建設株式会社
三信建設工業株式会社
大成ロテック株式会社
成和リニューアルワークス株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)、三信建設工業株式会社(社長:山﨑淳一)、大成ロテック株式会社(社長:西田義則)、成和リニューアルワークス株式会社(社長:幸長茂雄)「以下、4社」は、低騒音・低振動のボトムフィード方式※1で周辺地盤の密度を増大させる液状化対策工法「TS-improver」を開発しました。本工法の適用により、施工性の向上と改良杭の本数削減による低コスト化が可能となります。

 液状化対策を目的とした地盤改良を施工する場合、地盤条件や周囲の状況に応じた適切な工法を選定する必要があります。このうち、地中に改良杭を造成することで周辺地盤の密度を増大させる従来の工法は多数の実績があります。しかし、これらの工法には以下のような課題がありました。また、近年では周辺環境への配慮から、低騒音・低振動工法へのニーズも高まってきています。(表1参照)

表1 地盤密度を増大させる従来工法の課題

工法名

課題

サンドコンパクションパイル工法※2
静的締固め砂杭工法※3

・杭打専用機械の使用が必要で、汎用性に欠ける。
・施工杭径が700mmであり、通常太径化できない。
・サンドコンパクションパイル工法は騒音・振動が発生し易い。

バイブロフローテーション工法※4

・地中に中詰材を供給する際にトップフィード方式を採用しているため、深度毎の材料投入量を正確に把握することが難しい。
・騒音・振動が発生し易い。

 そこで4社は、上記の課題を解決するため、本工法を開発し、実際の建設機械を用いて本工法の性能検証を行い、締固めによる対策効果を確認しました。(写真1参照)

 本工法の施工手順および特徴は以下のとおりです。

【施工手順】(図1参照)

  1. クレーンで吊り下げたバイブロフロットを所定深度まで貫入
  2. 上部ホッパー部から投入した中詰材をバイブロフロットの先端から地中に供給
  3. バイブロフロットを上下に動かしながら、地中内に太径改良杭を造成
  4. 地盤の深部から浅部へと①から③の手順を繰り返し、改良対象区域の地盤密度を増大

【特徴】

  1. 1

    φ800mm(換算杭径※5)の太径改良杭により打設本数を減らし、施工延長を20%削減
    既往のサンドコンパクションパイル工法で用いる杭径φ700mmに比べ、φ800mm(換算杭径)に拡径した太径改良杭により造成することで打設本数を減らし、施工延長を20%程度削減することが可能です。

  2. 2

    高周波振動機の採用により低騒音・低振動での施工が可能
    本工法では、高周波振動機を用いて改良杭を造成します。高周波振動は地中における距離減衰が大きく、周囲に騒音・振動が伝わりにくいという特徴があります。そのため、低騒音・低振動での施工が可能です。(図2、3参照)

  3. 3

    汎用クレーンを用いた施工が可能
    本工法は汎用クローラクレーンで施工でき、三点式杭打機等の専用機械は不要です。

  4. 4

    先端フィン等の貫入補助装置により施工性が向上
    先端フィンやウォータージェットなどの貫入補助装置の装備により、ケーシングパイプの地盤への貫入と杭造成時に中詰材の圧入・拡径を容易に行え、施工性が向上します。(写真2参照)

  5. 5

    ボトムフィード方式を用いて中詰材供給量を把握し、改良杭の品質を確保
    ボトムフィード方式を用いて中詰材を地中に供給する際、ケーシングパイプ内の中詰材量を計測・記録し充填が把握できるため、供給量不足を防止し改良杭の品質確保が可能となります。

 今後、4社は、土木・建築分野を問わず、低騒音・低振動で地盤密度を増大させる液状化対策工法として本工法を積極的に提案してまいります。

写真1 高周波振動機(バイブロフロット)を用いた施工状況
写真1 高周波振動機(バイブロフロット)を用いた施工状況
図1 改良杭造成手順 (赤線は施工ステップ毎の振動機先端深度を示す)
図1 改良杭造成手順
(赤線は施工ステップ毎の振動機先端深度を示す)
写真2 貫入補助装置 (先端フィン、ウォータージェット等を活用)
写真2 貫入補助装置
(先端フィン、ウォータージェット等を活用)
図2 騒音の距離減衰
図2 騒音の距離減衰
図3 振動の距離減衰
図3 振動の距離減衰
  1. ※1

    ボトムフィード方式:地中に貫入した地盤改良専用装置を用いて、地中に改良杭を造成する際に、装置の先端から地中へ中詰材を供給する方式。地表面から供給する場合は、トップフィード方式という。

  2. ※2

    サンドコンパクションパイル(SCP)工法:三点式杭打機をベースマシンとし、動的な低周波振動機をケーシングパイプ上部に配置した装置を上下運動させφ700mmの改良杭を地中に造成し、密度増大を図る地盤改良工法。

  3. ※3

    静的締固め砂杭工法:三点式杭打機をベースマシンとし、強制的な昇降装置を用いてケーシングパイプを回転圧入し、ケーシングパイプを上下運動させることでφ700mmの改良杭を地中に造成し、密度増大を図る地盤改良工法。

  4. ※4

    バイブロフローテーション工法:クレーンで吊るした振動機(バイブロフロット)をウォータージェットと併用して地中部に挿入し、地表面から砂等を供給しながら徐々に引き上げることで周囲の砂地盤を締固める工法。

  5. ※5

    換算杭径:振動と中詰材圧入の効果を、圧入のみの成分に換算した杭径。