「T-iDigital Field」の機能を拡張

デジタルツイン技術を用いて建設機械との接触を防止

2021年11月26日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、施工中に得られる膨大なデジタルデータを活用して工事関係者間で情報共有し、効率的な施工および安全管理を支援するシステム「T-iDigital Field」※1の機能を拡張しました。本システムには新たにデジタルツイン技術を用いて建設機械との接触を防止するアプリケーションを導入し、この度、当社が施工する建設現場においてその性能を検証しました。

 近年、建設現場における機械関連災害は減少傾向にありますが、依然として「はさまれ、巻き込まれ災害」、「激突され災害」は、建設現場災害の1~2割を占めています。(厚生労働省HP災害発生状況データ参照)そのため、今後、建設現場において自動運転建設機械の導入が進み、現場作業員との協働が始まると、有人または無人の「建設機械同士」や「建設機械と現場作業員」の接触を防ぐ安全システムの構築が必要となってきます。
 そこで、当社は、2020年7月に独自開発し運用中の現場管理システム「T-iDigital Field」の機能をさらに拡張し、今回、デジタルツイン技術を用いて建設現場を仮想空間上に再現し、建設機械や現場作業員の位置を把握することで、現実空間での接触を防止するシステムを開発しました。(図1参照)

 本システムの機能は以下のとおりです。

  • 3D点群データを用いて仮想空間上に建設現場を再現し、現実空間の建設機械から得たGNSS※2位置情報を基に、建設機械の位置、動線を仮想空間上に表示します。
  • 建設機械と対象物との距離などを仮想空間上でリアルタイムに把握し、お互いが接触する恐れがある場合には、現実空間の建設機械を制御し、警報発信や非常停止させます。
  • 現場作業員がGNSS発信機を携帯することで、建設機械同士だけでなく建設機械と現場作業員の動きを把握でき、双方の接触を防止します。

 今後、当社は、現場適用により蓄積される建設機械の作業データを分析し、現場条件に応じた最適な施工方法の選定や環境に配慮した建設機械の燃費効率などの検証を行い、さらに有効な機能の開発と適用を進めてまいります。

図1 建設機械の接触防止システム概念図
図1 建設機械の接触防止システム概念図
  1. ※1

    T-iDigital Field:
    T-iDigital Fieldは、CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放されるとともに、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値が創出され、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。

    T-iDigital Field概念図
    T-iDigital Field概念図

    なお、CPS(Cyber-Physical Systems)とは、現実(フィジカル)空間における様々なデータをセンサおよびネットワークを通じて仮想(サイバー)空間に収集し、データの分析・解析を行い、その結果を現実空間にフィードバックすることで、産業システムの全過程に対して効率化することを目的とする。
    CPS(Cyber-Physical Systems)概念図
    CPS(Cyber-Physical Systems)概念図
  2. ※2

    GNSS(Global Navigation Satellite System):
    人工衛星を使用して地上の位置を計測する「衛星測位システム」のうち、アメリカが運用するGPS(Global Positioning System)を含み、全地球を測位対象とすることができるシステムの総称。