集成材とPC梁を一体化させた複合梁「T-WOOD® PC-BEAM」を開発

梁のデザイン性と構造性能を向上させ、製作時の環境負荷を低減

2021年10月25日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、集成材※1とプレストレストコンクリート梁(以下、PC梁※2)を一体化し、梁のデザイン性と構造性能を向上させた複合梁「T-WOOD PC-BEAM」を開発しました。この複合梁は、集成材が型枠と化粧仕上げ材の各機能を兼ね備えており、梁の工場製作時に型枠材などの廃棄物発生を抑制できることから、環境負荷低減にも寄与します。

 2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた脱炭素社会の実現のため、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収して内部に炭素として貯蔵している木材や集成材などの木質材料の利用が進められています。建設業界においても木材を利用して建築物へ炭素の貯蔵を可能とするような、中・大規模建築物が注目されており、部材のデザインや構造性能などの価値の向上を図り、環境負荷低減に対して量的・質的にも大幅な社会貢献が見込まれています。
 そこで当社は、こうしたニーズに応えるため、集成材などの木質材料と鉄筋コンクリート造の建築物で用いるPC梁を一体化し、部材としての価値の向上と環境負荷低減を可能とする複合梁「T-WOOD PC-BEAM」を開発しました。

 「T-WOOD PC-BEAM」の特徴は以下のとおりです。(図1~図3参照)

  1. 1

    自然で温かみのある木質空間を創出
    PC梁の表層両側面に集成材を配置することで豊かな木質感を実現しており、様々な用途の建築物に対し、自然で温かみのある木質空間を提供できます。また、地元産木材を採用することで、地方自治体等の木材利用ニーズの促進にも応えることが可能です。

  2. 2

    構造性能を向上
    集成材とPC梁を構造用ビスで一体化しているため、梁全体の曲げ剛性(変形のしにくさ)が10~20%程度向上し、これにより曲げ耐力(壊れにくさ)も50%程度向上します。また、この複合梁を用いて床版を構築した場合、上記の効果により床の振動が10%程度低減され、上階利用者の歩行感や居住性の向上につながります。

  3. 3

    環境負荷を低減
    工場でPC梁製作に用いる鋼製型枠の代わりに集成材を利用するため、型枠の取外し作業等が不要となり、型枠材などの廃棄物発生も抑制することができます。また、木質材料はその重さの半分が炭素で構成され、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収して内部に相当量の炭素として貯蔵されるため、複合梁を用いた鉄筋コンクリート造建築物での木材利用を介して、環境負荷低減に寄与できます。現在建設中の古平町中心拠点誘導複合施設(北海道古平郡)で試算した場合、約128tの二酸化炭素※3を同施設に用いる木質材料に貯蔵させることが可能です。

 今後、当社は、「T-WOOD PC-BEAM」を積極的に提案していくことで、上質な木質空間を提供しながら、長期間にわたり木材内部に炭素を貯蔵できる環境配慮型の建築物として展開し、脱炭素社会の実現に向け貢献してまいります。

図1 本部材の断面構成事例
図1 本部材の断面構成事例
図2 施設での適用事例(従来と本部材の適用イメージ比較)
図2 施設での適用事例(従来と本部材の適用イメージ比較)
図3 古平町中心拠点誘導複合施設の外観
図3 古平町中心拠点誘導複合施設の外観
    1. ※1

      集成材:断面寸法の小さい板材(ラミナ)の繊維方向を同一にして重ねて接着した木質材料

    2. ※2

      PC梁:曲げ耐力の向上を目的として、あらかじめ圧縮応力を加えた鉄筋コンクリート梁

    3. ※3

      128tの二酸化炭素:一般の木造住宅の約10棟分、延べ床面積約1,300m2に相当