吹付け状況をリアルタイムにモニタリングする「T-ショットマーカー」を開発

吹付け厚さを定量的に把握し、切羽での作業効率と安全性を向上

2021年10月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、マック株式会社(社長:宮原宏史)と共同で、山岳トンネル工事の切羽(掘削面)へのコンクリート吹付作業において、レーザー距離表示装置を用いて吹付け厚さをリアルタイムに把握するモニタリングシステム「T-ショットマーカー」を開発しました。本技術の適用により、コンクリート吹付け時に厚さを確認しながら作業できるため、切羽での作業効率と安全性が向上し、また、確実な吹付けコンクリートの施工が可能となります。

 従来、切羽へのコンクリート吹付け作業では、吹付け機オペレーターが切羽近傍で目視により厚さを確認しながら施工しており、定量的な管理が困難な状況でした。そのため、吹付け厚さが不足すると、切羽から土砂や岩が剥がれ落ちる肌落ちが発生する懸念がありました。また、従来の厚さ管理は、一定距離掘削後の作業終了時に吹付けコンクリートに検測孔を空け、コンベックスなどにより直接厚さを計測しており、吹付け時にリアルタイムに実施されてはいませんでした。このように従来の方法は切羽近傍での作業となるため、作業効率や安全性を考慮する必要があり、また、リアルタイムに吹付け厚さを定量的に計測し、施工管理できる技術が求められていました。

 そこで、当社とマック(株)は、吹付け作業中にリアルタイムに吹付け厚さを把握できる連続計測モニタリングシステムを開発しました。この度、大分212号跡田トンネル(東工区)新設工事(発注者:国土交通省九州地方整備局)にて本システムの性能を検証し、その有効性を確認しました。

 なお、当社は、山岳トンネル施工の自動化・機械化に関する技術開発に取り組んでおり、本技術はその一翼を担う技術です。

「T-ショットマーカー」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    吹付厚さに応じて表示用レーザー光の色・照射パターンを自由に設定可能(図1、表1参照)
    本技術は、レーザー距離計と表示用レーザー光を一体化したレーザー距離表示装置を吹付けマシンの運転席周囲に複数台設置し、吹付け時にレーザー距離計を用いて吹付け時の厚さを連続計測します。表示用レーザー光で吹付け厚さの過不足状況を吹付け面に色(緑・赤)と照射パターン(点灯・点滅)で表示することで、オペレーターは吹付け厚さをリアルタイムに把握しながら作業できます。

    表1 レーザー光色表示例(目標最小吹付け厚さ50mmの場合)
    表1 レーザー光色表示例(目標最小吹付け厚さ50mm※1の場合)
  2. 2

    切羽面だけでなく側壁面の吹付け厚さも測定可能(写真1、2参照)
    吹付け機の運転席周囲に設置されたレーザー距離表示装置により、測定位置が容易に調整できるほか、水平角度・傾斜角度計も内蔵しているため、側壁面の吹付け厚さ測定も可能となります。また、距離表示装置はメンテナンスが容易で、水掛りに対する長期耐久性にも優れています。

  3. 3

    吹付け厚さデータの帳票出力により、切羽での作業の効率化と安全性を向上
    レーザー距離表示装置で連続計測された吹付け厚さのデータは制御ボックスに自動保存され、帳票に出力することができます。これにより、これまで吹付け施工後に実施してきた切羽近傍での検測孔測定作業が不要となり、作業の効率化と安全性の向上が図れます。

 今後、当社は、本技術を全国の山岳トンネル工事に展開し、現場状況に合わせて改良を加えながら、吹付け作業の更なる効率化と安全性の向上を進めるとともに、山岳トンネル施工における自動化・機械化に取り組んでまいります。

図1 「T-ショットマーカー」の概要
図1 「T-ショットマーカー」の概要
 写真1 運転席の後方からの設置状況 写真2 吹付け機の外側からの設置状況
  1. ※1

    吹付け厚さ:厚生労働省の平成30年1月の「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」の改定では、地山の状態に応じて適切な吹付け厚さを確保するとあり、大成建設では最小吹付け厚さ50mmを確保し、地山状況を確認しながら不足する場合は増し吹きしている。