「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発に着手

CO2を活用した革新的な地熱発電技術の開発により脱炭素に貢献

2021年8月23日
大成建設株式会社
地熱技術開発株式会社

 大成建設株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:相川 善郎)と地熱技術開発株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:中田 晴弥)は共同で、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から公募された地熱発電技術研究開発事業※1「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」(以下、本事業)に応募し、2021年7月に採択されました。本事業の実施期間は、2021年度から2025年度の5年間が予定されています。

 環太平洋造山帯に位置する日本は世界でも有数の地熱資源国であり、世界第3位の地熱資源量(2,347万kW※2)を誇ります。その膨大な地熱資源を活用した地熱発電は、地中で温められた「熱水(蒸気を含む)」を汲み上げて、タービンを回転させることによって発電する再生可能エネルギーであり、昼夜を問わず安定的に発電可能なベースロード電源とされています。しかし、地熱発電に係る調査から事業化するまでに相当な時間を要し、さらにボーリング調査により地層中が十分に高温であることが確認されても、熱水量不足により、発電には適せず事業化に至らないなどの課題があり、国内の総発電電力量に対する地熱発電電力量の割合は0.3%に留まっています。そのため、今後、地熱資源の有効活用による地熱発電事業を加速するためには、熱水に代わる新たな地熱発電技術の開発が求められています。
 そこで、大成建設と地熱技術開発は、地熱によって高温状態となった地層中にCO2を圧入し、熱媒体として循環させることで地熱資源を採熱する、熱水資源に頼らない革新的な地熱発電の技術開発に着手します。(図1参照)
 本事業では、高温状態にあるが熱水量が不足するため従来技術では地熱発電に適用できなかった地熱貯留層中に、CO2を圧入し、高温になったCO2※3を回収することで地熱発電が可能になります。既往の研究によれば、高温高圧下でのCO2の物性は高効率に地熱資源を採熱する上で有利であると考えられています※4。圧入されたCO2の一部は、地熱貯留層中に炭酸塩鉱物などとして固定されるため、カーボンニュートラルへの貢献も期待できます。(図1参照)

 本事業における開発技術項目は、以下の通りです。

  • CO2地熱発電のための全体システム設計
  • CO2を破砕流体とした人工地熱貯留層造成技術
  • 地熱貯留層内でのCO2流体挙動把握技術

大成建設株式会社

 大成建設は、火力発電所などの排ガスから二酸化炭素を分離・回収し、地層中に圧入・貯留する「二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)」において、地盤に圧入した後のCO2の挙動(流れや化学反応など)を数値解析する技術を開発し、長年にわたり国内外のCCSの研究開発や実証事業に活用してまいりました。本事業ではこの解析技術を用いて、地熱貯留層内でのCO2流体挙動把握技術の開発を主に担当します。

地熱技術開発株式会社

 地熱技術開発は、「地熱発電技術」において、水を人工的に地下に注入・循環することで地熱流体の生産を維持・増産する技術(EGS:Enhanced Geothermal System)に関する技術開発を長年実施してまいりました。また、「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」において、CO2の挙動を連続観測する坑井内圧力温度観測装置を国内のCCS実証実験場に提供するとともに、CO2を地熱貯留層に注入する場合における岩石・水との反応挙動の数値モデル解析を行ってまいりました。本事業ではこれらの技術を用いて、全体システム設計と地熱貯留層内でのCO2人工貯留層造成技術の開発を主に担当します。

 今後、大成建設と地熱技術開発は、本事業において、これまで培った技術を駆使し、CO2を用いた地熱発電の社会実装のための基礎技術の確立を目指します。また、本事業を通じて、2050年のカーボンニュートラル社会の構築に貢献してまいります。

図1 CO2地熱発電の概念図
図1 CO2地熱発電の概念図
    1. ※1

      2030年のエネルギーミックスの達成をはじめ、2050年のカーボンニュートラル達成にはCO2の排出の少ない地熱発電の更なる推進が必要であり、現在の熱水資源を用いた地熱発電に加えて熱水資源に頼らない革新的地熱発電技術開発の委託研究を公募。

    2. ※2

      資源エネルギー庁資料、「地熱資源開発の現状について」平成29年6月。 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/022_04_00.pdf (参照 2021-06-09)

    3. ※3

      深い地盤中では温度と圧力が高いため、CO2は液体・気体の両方の性質(高密度、低粘性)を持った超臨界状態となる。

    4. ※4

      超臨界状態のCO2は、低粘性のため小さな亀裂面に入り込みやすく、熱交換を効率的に行うことができる。また高密度で圧縮率が大きいため、生産井での採熱の効率も高くなる可能性がある。