土壌水分を素早く吸収する分別促進材「T-クイック土ライ」を開発
付着性が高い粘性土を砂状に改質し、分別処理を効率化
2021年4月14日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、回収した除去土壌等に含まれている廃棄物に付着した粘性の高い土壌を短時間で砂状にして、廃棄物と土壌に分離できる分別促進材「T-クイック土ライ」を開発しました。本材料の適用により、付着性が高い粘性土を砂状に改質し、機材や廃棄物等に付着した土壌を容易に剥がすことができ、ふるい分け作業など分別処理の効率化を図ることができます。
現在、福島県の中間貯蔵施設※1では、除染作業に伴い発生した放射性物質を含む除去土壌※2等を入れた土のう袋を破り、内容物を取り出して植物根等の廃棄物と土壌を分離する分別処理※3が進められています。しかし、含水率が高く付着性のある粘性土が除去土壌に多く含まれていると、処理で使用する各装置やふるい分け作業の過程で残った残渣にも粘性土が付着したままとなるなど、処理効率が低下するという課題がありました。
そこで当社は、ふるい分けなどの処理効率を高めるため、二次分別設備で使用している改質材より短時間で粘性土を砂状にできる分別促進材「T-クイック土ライ」を開発しました。「T-クイック土ライ」は、吸水性ポリマー、多孔質物質(ゼオライト)、炭酸カルシウムで構成されており、本材料を破袋機に投入することにより(図1参照)、これまで困難であった高含水率の粘性土を砂状に改質し、除去土壌の効率的な一次分別処理を可能としました。
「T-クイック土ライ」の特徴は以下のとおりです。
- 1
吸水性ポリマーの最適粒径範囲を設定し、吸水速度を向上(図2参照)
本材料の主材として用いる粒状体の吸水性ポリマー※4は、従来の土壌改質に用いている平均粒径が500µm程度の比較的大きな材料ではなく、粒径範囲が75~150µmの細かい材料を採用しているため、効率よく粘性土と混合でき、十分な吸水量を確保しつつ吸水速度を向上させることができます。 - 2
最適な配合設定により、改質効果の向上と環境負荷抑制が可能
本材料は、吸水性ポリマーの性能を維持するため、ゼオライトを使ってカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の金属イオンを速やかに吸着させ、最小限の投入量で粘性土の改質効果を高めることが可能です。また、土壌中のpHを中性に保つ調整材として炭酸カルシウムが配合されており、改質後に土壌から有毒ガスや重金属等の溶出を抑制できます。
今後、当社は、中間貯蔵施設以外の自然災害で発生するような木くずやコンクリートがらなどの災害廃棄物に付着した粘性土の分別処理に、「T-クイック土ライ」を積極的に提案していく予定です。
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中間貯蔵施設:
福島県内の除染に伴い発生した除去土壌を最終処分までの間、安全かつ集中的に貯蔵する施設であり、受入・分別施設、土壌貯蔵施設、仮設処理施設、廃棄物貯蔵施設からなる。 - ※2
除去⼟壌:
東京電力福島第⼀原⼦⼒発電所の事故により、環境中に放出された放射性物質を取り除くための除染作業によって回収された放射性物質を含む土壌 - ※3
分別処理:
除染土壌を保管している⼤型土のう袋を破袋して、裁断された土のう袋や大きな石等を一次分別設備で除去後、吸水効果のある改質材を添加・混合して土壌を改質し、二次分別設備で20mm以下の土砂と可燃物等に分別する工程 - ※4
吸水性ポリマー:
一般的に紙おむつ等で使われている吸水倍率(体積に対する吸水量)が最大で400倍に達するアクリル酸塩系高吸水性樹脂。粘性土の分離速度を高める吸水性ポリマーの最適粒径範囲が存在する点について、2020年3月に大成建設株式会社とテクニカ合同株式会社で共同特許出願を行い、2020年9月に権利が成立した。(特許 第6765661号)。 - ※5
吸水速度:
JIS K 7224 高吸水性樹脂の吸水速度試験方法に準じて実施した結果から算出 - ※6
吸水倍率:
JIS K 7223 高吸水性樹脂の吸水量試験方法に準じて実施した結果から算出 - ※7
ふるい通過率:
粘性土比率の大きい高含水率土壌に吸水性ポリマーを重量比で0.1%添加して30秒撹拌し、その60秒後に目開き19mmでふるい分けした際の土壌の通過率