排水湿潤連続養生技術「Wキュアリング®」をトンネル覆工コンクリートに適用
塩害・凍害に対する耐久性の大幅な向上を確認
2021年3月23日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2013年に開発したコンクリート表層の耐久性向上を図る排水湿潤連続養生技術「Wキュアリング※1」を2017年に施工したトンネル工事に適用し、今回、覆工コンクリート品質調査における性状評価を実施した結果、塩害・凍害に対して従来工法※2よりも耐久性が大幅に向上することを確認しました。
コンクリート構造物の品質を保つためには、水分や塩分などの浸透からコンクリート内部の鉄筋腐食を防ぎ、凍結融解によるコンクリート表層の剥離を抑制することが重要です。特にトンネル工事では、凍結融解の影響を受けやすい覆工コンクリート下部や坑口近傍の外部壁面で長期間に渡り、耐久性を長く保つことが求められております。寒冷地では道路凍結を防止するため凍結抑制剤を使用しておりますが抑制剤の主成分である塩化ナトリウムを含んだ水分が浸透し、コンクリート表面の剥離や鉄筋腐食が発生しやすい状況にありました。
そこで当社は、国土交通省東北地方整備局発注のトンネル工事において、覆工コンクリート工事に使用する移動式鋼製型枠(以下、セントル)に、木枠、透水板、透水性シートを一体化させたWキュアリング専用型枠ユニット(以下、型枠ユニット)を設置してコンクリートを打込み後、脱型せずに湿潤連続養生を実施しました。そして、この度、覆工コンクリートを対象に材齢3年目に実施したコンクリート品質調査により性状を評価し、塩害・凍害に対して従来工法に比べ高耐久性を維持していることを確認しました。
本技術の特徴および品質調査結果は以下のとおりです。
【特徴】(図1、2および写真1、2参照)
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従来と同様の工程で、覆工コンクリートの施工が可能
トンネル壁面下部へ覆工コンクリート打込み後、セントルは翌日にトンネル前方に移動しますが、型枠ユニットのみを残置し、給水と余剰水排水による連続湿潤養生を行うため、従来の覆工コンクリート施工と同様の工程による作業が可能です。 - 2
塩害・凍害に対する覆工コンクリートの耐久性が向上
覆工コンクリート表層に緻密な組織を形成し、表層での水分や塩分の浸透、透気を抑制することができるため、塩害や凍害に対して覆工コンクリートの耐久性向上を図ることができます。
【品質調査結果】(図3参照)
覆工コンクリート構築後、材齢3年目にあたる2020年9月にコンクリート品質調査により性状評価を行った結果は以下のとおりです。
- 従来工法と比較し、塩害・凍害抑制に関連する表面吸水速度※3は約1/18、表層透気係数※4は約1/20に低下していることを確認しました。
- 本技術で施工したコンクリート表面の表層透気係数は、評価グレードでランク「優」となる品質が得られました。
- 上記の結果から、本技術の適用により、従来工法に比べ構造物の耐久性が約2倍向上※5することが推定され、構造物メンテナンス頻度の大幅な低減を見込むことができます。
今後、当社は、工種や部材の条件等に合わせて本技術の養生方法に適宜改良を加え、特に塩害・凍害への対策が求められる鉄筋コンクリート構造物へ適用してまいります。
- ※1
Wキュアリング:特殊な透水板(透水性型枠ユニット)を使用することで打ち込み直後のコンクリート余剰水の排出と湿潤養生を脱型せずに連続で実施する養生方法で、東京大学生産技術研究所岸利治教授と共同開発した技術。本技術の適用により、コンクリート表層に緻密な組織を形成し、物理的に表層での水分や塩分の浸透を抑制。当社ではこれまでトンネル、道路、橋梁工事などの壁構造物、壁高欄を中心に9現場約8,000m2に適用。
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従来工法:移動式鋼製型枠(セントル)を用いた施工方法。
- ※3
表面吸水速度:自然圧力での10分間におけるコンクリート表層の吸水速度。速度が小さいほど小さいほど表層が緻密で耐久性が高い。
- ※4
表層透気係数:真空状態から気圧が回復するまでの時間から求めたコンクリート表層の空気の通りやすさの指標。係数が小さいほど表層が緻密で耐久性が高い。
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耐久性の向上:既往の研究結果をもとに表層透気係数が1/20以下となることで,塩化物イオンの見かけの拡散係数が1/2以下に低下すると推定し、その結果をもとに試算。