後施工耐震補強技術「ポストヘッドバー®」の適用範囲を拡大

両端円形プレート型での太径鉄筋使用と機械式継手型の上向き施工が可能に

2021年3月15日
大成建設株式会社
成和リニューアルワークス株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、成和リニューアルワークス株式会社(社長:山上正敏)と共同で、構造物の耐震性能の向上と長寿命化を図る、後施工耐震(せん断)補強技術「ポストヘッドバー」※1の適用範囲を拡大し、2020年12月に建設技術審査証明の内容変更を行いました。これにより、両端円形プレート型での太径鉄筋の使用と機械式継手型による上向き施工が可能となり、施工性がさらに向上しました。

 ポストヘッドバー工法は、最新の設計基準に照らし合わせた場合、せん断耐力が不足してしまう既存鉄筋コンクリート構造物(以下、RC構造物)を対象とした耐震補強工法です。RC構造物の片側から後施工プレート定着型せん断補強鉄筋「ポストヘッドバー」を挿入・固定して部材のせん断耐力を向上させます。本工法を適用することで、耐震補強のための部材厚を増やさずに部材のせん断耐力を向上させることができます。
 当社は、2005年に(一財)土木研究センターの建設技術審査証明※2を取得後、地中RC構造物の耐震補強工事を中心に本工法を適用してきました。また、2019年12月には(株)都市居住評価センターの構造評定※3を取得し、建築分野でも適用可能となり、施工件数で約1,000件、せん断補強鉄筋の施工本数で153万本以上の実績を有しています。

 今回の建設技術審査証明の取得により、水門、橋台などの大型構造物や地中RC構造物への適用範囲が拡がり、また機械・設備等により制約を受ける狭隘な場所での施工性も向上することで、構造物のさらなる長寿命化を図ることができます。(図1~図4、表1参照)

 今回取得した建設技術審査証明の概要は以下の通りです。

    1. 1

      太径鉄筋の利用が可能
      「両端円形プレート型ポストヘッドバー」を、従来より径が太いD32の鉄筋まで適用できるよう範囲を拡大しました。太径鉄筋の使用により、施工本数を減らし、従来認証を受けていた片端矩形プレート型を使用するよりも端部定着プレートが小さくなるため、既存躯体へ挿入する際の表層部削孔による損傷を低減でき、その結果、工期短縮、コストダウンを図ることが可能になります。

    2. 2

      機械式継手型の上向き施工が可能
      狭い作業空間での補強工事に適用可能な「機械式継手型ポストヘッドバー」に、新たに上向き施工方法が加わりました。これにより、あらゆる場所でいずれの種類でもポストヘッドバーの上向き、横向き、下向き施工が可能となります。

 今後、当社は、最新の設計基準に従って照査した場合に、せん断耐力が不足する既存RC構造物の耐震補強工事に対し、今回拡充した範囲も含めた本技術を適用してまいります。

図1 ポストヘッドバー工法の概要
図1 ポストヘッドバー工法の概要
図2 機械式継手型ポストヘッドバーの上向き施工手順
図2 機械式継手型ポストヘッドバーの上向き施工手順
図3 適用範囲が拡大されたポストヘッドバーの種類
図3 適用範囲が拡大されたポストヘッドバーの種類
図4 施工状況
図4 施工状況
表1 ポストヘッドバーの拡大された適用範囲
表1 ポストヘッドバーの拡大された適用範囲
    1. ※1

      後施工プレート定着型せん断補強鉄筋「ポストヘッドバー」:
      埋込側には削孔径により大きさを調整した小型円形プレートを、手前側には矩形または小型円形プレートをそれぞれ摩擦圧接によって取り付けた耐震補強用のせん断補強鉄筋。「両端円形プレート型」は手前側が小型円形プレートのもの、「片端矩形プレート型」は手前側が矩形プレートのもの。「機械式継手型」は、鉄筋を複数に分割して、トルク固定式の機械式継手を用いて鉄筋を接続するタイプのポストヘッドバーで、補強対象部材の手前側に十分な作業空間が確保できない場合でも施工を可能にしたもの。

    2. ※2

      土木系材料・製品・技術、道路保全技術 建技審証 第0522号(有効期限:2025年12月20日)

    3. ※3

      UHEC評定-構2019004