デザイン性に優れた、低コストで耐火性能を有する木造部材を開発

木仕上げ柱で2時間耐火部材の大臣認定取得

2021年3月10日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、大規模・中高層建築物に適用可能で、仕上げ木材の樹種を自由に選定できるデザイン性に優れた、低コストで耐火性能を有する木造部材を開発し、2020年10月に木仕上げの2時間耐火構造柱の国土交通大臣認定を取得しました。

 近年、低炭素化社会の実現や国産木材資源の有効活用の観点から、建築物への木材利用が促進されており、大規模・中高層建築物に適用するため、耐火構造を有する様々な木造部材が開発されています。一般的な耐火木造部材は、①建物荷重を支える木材の「荷重支持部」、②荷重支持部を燃焼や炭化から守るため、難燃処理を施した木材や石こうボードなどの「燃え止まり層」、③表面の仕上げ木材による「燃えしろ層」の三層から構成されます。従来の耐火木造部材では、「燃え止まり層」を構成する場合に燃焼が自然に停止する必要があり、「燃えしろ層」は木材の炭化による断熱効果を見込んでいるため板厚を薄くできず部材断面が大きくなってしまいます。また、仕上げ木材が耐火被覆を兼ねているため、使える木材の樹種や密度が限定されるなど、部材全体の製造コストが高くなるという課題がありました。

 そこで当社はこれらの課題を解決するため、耐火性が高い、安価な石こうのみで「燃え止まり層」を構築して耐火性能を確保しつつ、仕上げ木材の樹種を自由に選定できるデザイン性に優れた、低コストな木仕上げ耐火柱部材を開発しました。(図1参照)

 本技術の特徴は以下のとおりです。(写真1~3参照)

  1. 1

    部材断面の縮小と仕上げ木材の自由度を向上
    今回開発した柱部材は、石こうを用いた「燃え止まり層」のみで2時間耐火構造を実現しています。そのため、従来の耐火柱部材と比べ、部材断面を小さくすることが可能で、また建設コストや建築物のデザインに応じて、最適な樹種の仕上げ木材を選択することができます。

  2. 2

    低コストと環境負荷低減を実現可能
    「燃え止まり層」は、水に溶いた石こうを流し込むことで一度に形成でき、従来品と比べ、低コストで製作が可能です。また、「燃え止まり層」には、廃石こうも使用できることから、環境負荷低減への貢献が望めます。

  3. 3

    部材接合部へ石こうの塗付・吹付による耐火被覆の施工が可能
    耐火柱部材と納まりが複雑になりやすいブレースや異種構造との接合部には、石こうの塗付や吹付を用いることで、容易にかつ隙間なく耐火被覆を施工することができます。

 今後、当社は、本技術の積極的な活用に向け、梁への適用や使用状況に応じて適切な耐火時間を設定した条件での大臣認定取得を進めてまいります。また、木材利用に関する発注者のニーズに答えるため、柱や梁などに木仕上げ部材を適用した、低コストでデザイン性に優れた空間の提供を目指します。

図1  2時間耐火木造柱部材の断面構成
図1 2時間耐火木造柱部材の断面構成
写真1 表面木仕上げの柱部材(外径270mm)
写真1 表面木仕上げの柱部材(外径270mm)
写真2 耐火試験状況
写真2 耐火試験状況
写真3 耐火試験後の柱部材状況(左:外観、右:荷重支持部が炭化していないことを確認)
写真3 耐火試験後の柱部材状況
(左:外観、右:荷重支持部が炭化していないことを確認)
  • 廃石こうおよび廃石こうボードは、再利用技術が確立されていないため廃棄処分される割合が多いだけでなく、管理型最終処分場での処理が義務づけられており、処分場の不足が懸念されている。