2つの撮影機構を有する「高出力・高精細X線CT試験装置」の運用を開始

建設会社で国内初導入し、材料内部構造を精密評価

2021年2月12日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建設工事で使用される様々な材料の特性を把握し品質などを評価するため、材料内部の様子を非破壊・三次元で可視化できる、「高出力・高精細X線CT試験装置※1」を建設会社では国内で初めて導入し、運用を開始しました。本装置は、2つの回転方式(①試料ステージ回転(高解像撮影)、②X線源・検出部回転(試験時の経時変化撮影))を採用した撮影機構を備えており(写真2 参照)、各種材料や試験体の大きさ、形状、用途に応じて撮影方法を選択し、その内部構造を精密に評価することが可能となります。

 建設工事で扱う材料は、土、岩石やコンクリートに代表される複合材料など様々であり、これらの特性を調べるためには、力学試験や浸透試験を行い、両試験の結果を合わせて評価をすることが一般的でした。しかし、各種材料を精密に評価するには、これらの方法に加え、土・岩石内部に浸透する流体の動きやコンクリート構成材料の分布に基づいて生じる実際の現象を正しく理解する必要があり、材料内部の様子を精密に観察することが望まれていました。

 そこで当社は、各種材料内部の様子を精密に観察できる新たな実験設備として、高出力・高精細X線CT試験装置をこの度技術センターに導入し、運用を開始しました。

 本試験装置の特徴は以下のとおりです。

【機能】非破壊・三次元で高出力・高精細に可視化するX線源を搭載

 最大で医療用X線CT装置の約3倍の電圧となる高出力を有し、焦点寸法4μmの高精細な照射が可能な高性能X線源を搭載しており、直径数十cmまでの試料の内部構造をミクロンスケールで高解像度に撮影することが可能です。そのため、繊維補強コンクリート内部の繊維配向など、これまで確認が困難であった材料の内部構造や品質に関わる情報を容易に確認できるほか、岩石の空隙などについてもミクロンスケールで観察することが可能です。

【機構】高出力・高精細X線CT装置では世界初となる2つの撮影機構を搭載

 下表に示すとおり、従来の工業用と医療用X線CT装置でそれぞれ採用されている撮影機構を、世界で初めて同一装置に搭載しました。この機構により、試験状況に応じて材料内部の様子を幅広い用途で撮影することが可能となります。

撮影時の装置状況撮影用途

①X線源・検出部固定、試料ステージ回転
(主に工業用X線CT装置で採用)

拡大投影による高解像度撮影
(図1、図2参照)

②X線源・検出部回転、試料ステージ固定
(主に医療用X線CT装置で採用)
加力や浸透試験など各種試験時の材料内部の経時変化撮影(図3参照)

【規模】大型・重量試料や試験機器を設置可能

 一般的なX線CT装置では実施困難であった大型で重量のある試料などを本装置の試料ステージに設置して、撮影が可能です。また、試料ステージ上方に十分な空間を確保することで、高さのある試料なども設置できます。

 今後、当社は本装置を積極的に活用し、建設材料の安全性や耐久性に関する品質の可視化や、各種試験中における材料内部の現象を正確に理解することにより、新しい視点による研究開発をすすめ、新材料の開発、シミュレーション技術の高度化などの技術開発を推進し、さらなる技術力の向上を目指してまいります。

写真1 装置外観
写真1 装置外観
写真2 装置内部
写真2 装置内部
図1 砂岩の空隙
図1 砂岩の空隙
図2 繊維補強コンクリートの繊維と長さ分布
図2 繊維補強コンクリートの繊維と長さ分布
図3 岩石中の地下水溶存物質の移動状況(浸透試験)
図3 岩石中の地下水溶存物質の移動状況(浸透試験)
表

  1. ※1

    X線CT試験装置:
    CTはComputed Tomography(コンピュータ断層撮影)の略。360°方向(フルスキャンの場合)から物体にX線を照射・透過させた時のX線データを検出部で収集し、コンピュータを用いて解析することで、材料内部を非破壊かつ三次元で可視化する装置。