薄型樹脂パネルを用いたワイヤレス給電床「T-iPower Floor」を開発

従来の床厚を半減し、施工性向上を実現

2021年1月4日
大成建設株式会社
国立大学法人豊橋技術科学大学

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)、国立大学法人豊橋技術科学大学(学長:寺嶋一彦)、大日本印刷株式会社(社長:北島 義斉、以下DNP)は、汎用小型車両(以下、ビークル)やロボットに対してワイヤレスで給電を実現する内装床「T-iPower Floor」を開発しました。「T-iPower Floor」は、大成建設とDNPが共同開発した薄型樹脂パネルで構築されており、従来型の給電床と同等の性能を有しながら床厚を半減できるため、敷設に伴う工期短縮と工事費削減が可能となります。

 近年、生産施設や物流施設では、生産性向上を図るための方策として、作業員の省力化、無人化の需要が高まっており、屋内での荷物運搬用ビークル(AGV:Automated Guided Vehicle )やロボットの大量導入が進められています。しかし、これらビークルなどは従来バッテリーで走行するため、運行状況に応じてバッテリー充電や交換作業が必要となり、その間の稼働率低下が生じることから、ワイヤレス化などによる効率的な給電システムの導入が求められていました。
 大成建設と豊橋技術科学大学は、2013年より電気自動車などを対象として、車両のタイヤを介して電力を供給する電界結合方式を利用したワイヤレス給電床の開発を進めており、これまでに屋外での走行実験などの実績を重ねるとともに、屋内を走行するビークルへの適用についても検討を進めてきました。
 そしてこの度、内装床材の開発にあたり、DNPを共同開発者に加え、新築・既存の生産・物流施設の屋内向けに従来の給電床を大幅に改良し、新たな薄型樹脂パネルを用いたワイヤレス給電床「T-iPower Floor」を開発しました。

「T-iPower Floor」の特徴および実用化に向けた取り組みは以下のとおりです。

【特徴】

  1. 1

    給電床が走行中のビークルなどへ電力をワイヤレスで送電(図1参照)
    高周波電源を送電電極に接続することで走行中のビークルなどへ電力をワイヤレスで送ることが可能となります。この給電床を実装することにより、ビークルなどのバッテリー充電や交換作業が不要となり、稼働率が大幅に向上します。

  2. 2

    薄型樹脂パネルの給電床の実装により、効率的で柔軟な車両運用が可能(図2参照)
    この給電床は、厚さ4mmの薄型樹脂パネルにテープ上の送電電極を採用したことで、従来の半分の床厚で施工が可能です。また、給電床が薄型化されたことで、ビークルなどが送電レーンを乗り上げて横断することができ、効率的で柔軟な車両運用が実現されます。

  3. 3

    安価で施工性に優れ、レイアウト変更も容易(図3参照)
    この給電床は、薄型樹脂パネルを連続して敷設する「薄型パネル工法」を採用することで、従来の塗床工法で施工される給電床に比べて施工性に優れており、送電レーンのレイアウト変更にも容易に対応可能で、安価に構築できます。

【実用化技術開発】

 大成建設は、2020年度からDNPと共同で、「T-iPower Floor」の内装床材としての機能開発に加え、建物導入時の設計仕様や施工法など実用化のための技術開発を行っています。また、施設内を走行中のビークルに電力を供給するワイヤレス給電床の試験導入と運用などの実証試験※を開始する予定です。

 今後、大成建設、豊橋技術科学大学、DNPは、「T-iPower Floor」のさまざまな施設への適用に向けた検討、提案を進めるとともに、施設への実装に向けたワイヤレス給電システムのさらなる実証実験を進め、2025年度の商用化を目指します。

図1 電界結合方式ワイヤレス給電システムの概略図
図1 電界結合方式ワイヤレス給電システムの概略図
図2 断面構造の比較
図2 断面構造の比較
図3 従来品と開発品の施工方法比較
図3 従来品と開発品の施工方法比較
  • 実証実験:
    愛知県『知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅢ”小型ビークルのためのワイヤレス電力伝送システム(研究リーダー:豊橋技術科学大学)“』にて実施