泥水式シールド工事での配管厚さ自動計測・管理システムを開発

配管交換時期の事前把握により、安定した掘削と工程管理が可能

2020年12月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、泥水式シールド工事で用いる超音波厚さ計※1の機能を拡張し、掘削土砂と泥水を排出する配管の厚さを自動で計測するとともに、無線通信により収集した計測データを基に配管寿命を予測、管理する「配管厚さ自動計測・管理システム」を開発しました。本システムの適用により、広範囲に渡る配管の摩耗状況を効率よく確認し、配管の交換時期を事前に把握することができるため、泥水式シールド機の安定した掘進と工程管理が可能になります。

 礫や砂などの地盤を掘進する泥水式シールド工事では、配管が排出される土砂などで徐々に摩耗し、破損した場合、その交換作業のため工事を中断してしまうなど工事進捗に影響を及ぼす場合があります。そのため、配管の摩耗状況や配管の交換時期を的確に把握する技術が望まれていました。従来は、検査員が超音波厚さ計で毎日配管の厚みを計測していましたが、シールド工事の掘削距離の延長に伴い、配管距離も長くなるため、計測には非常に手間がかかっていました。

 そこで、当社は、配管の厚さを自動で計測し、無線通信により得られた計測データを基に配管寿命を予測、管理する「配管厚さ自動計測・管理システム」を開発しました。

本システムによる計測手順と特徴は以下のとおりです。

【計測手順】(図1、図2、写真1参照)

  1. 1

    超音波厚さ計にデータ自動計測および無線通信の制御機能を加えた「厚さ計測装置」を配管に設置し、本装置内に計測データを蓄積します。
    厚さ計測装置に使用する電源は、トンネル坑内の照明などから分岐して賄います。

  2. 2

    バッテリーロコ(坑内で資材等を運搬する車両)に搭載した無線式データ収集装置を用いて、蓄積された計測データを収集し、地上の中央監視室まで転送後、管理画面に表示します。

  3. 3

    中央監視室において収集した計測データに基づき、配管の摩耗状況から配管寿命を自動で予測し、配管の交換時期などを提示、管理します。

【特徴】

  1. a

    計測の省人化に寄与
    厚みを計測する探触子※2を長期間使用しても劣化しない緩衝材で挟み、磁石で配管に固定しています。これまでのように設置後、毎日、検査員が計測する必要がなくなり、省人化が図れます。

  2. b

    無線利用により、配管延長にかかわらず容易に計測・通信が可能
    厚さ計測装置にはメモリー機能と通信機能を装備しており、データ収集装置を搭載したバッテリーロコが通常運転中に計測データを回収し、立坑内の無線を使って地上の中央監視室に計測データを転送、一元管理します。すべての計測データは無線により地上へ伝送できるため、配管の延長に伴う通信ケーブルの設置が不要です。

  3. c

    配管交換時期の把握により掘削時の安定掘進と配管の延命化が可能
    自動計測したデータに基づき、配管の限界厚みまでの期間を予測できるため、配管の交換時期を事前に把握することが可能となります。そのため、破損前の配管交換や、厚みの減った配管を回転させて片減りによる破損を防止でき、シールド機の安定掘進と配管の延命化を図ることができます。

 今後、当社は、シールド工事やコンクリート工事などの建設現場で配管を使用する際、工事の作業効率や安全性などの向上を図るため、本システムを積極的に適応してまいります。

図1 本システムの概要 写真1 配管への探触子設置状況 図2 配管厚さの管理画面
  1. ※1超音波厚さ計:
    超音波(20KHz以上)を発信させ、その超音波が測定物の反対面にぶつかって反射してくるのを受信、その時間差を利用して、対象物の肉厚測定値を算出するもの。
  2. ※2

    探触子:
    超音波厚さ計の測定部で、配管と探触子を接触させて超音波を発信・受信する部分。