地盤注入改良材「T-GeoSiliquid」を開発

材料コストを低減し、現場作液自動化により作業効率を向上

2020年9月23日
大成建設株式会社
株式会社立花マテリアル
東興ジオテック株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)、株式会社立花マテリアル(社長:石井三郎),東興ジオテック株式会社(社長:瀬高末広)は共同で、液状化対策や地下掘削工事での止水対策に用いる地盤注入改良材「T-GeoSiliquid」を開発しました。本注入改良材は、素材見直しによる低コスト化を達成し、更に現場での作液工程の自動化により作業の効率化を実現しました。

 地震時に生じる液状化や建物周辺での地下工事に伴い、地盤の沈下や変形などのトラブルが予想される場合には事前に地盤改良を実施し、構造物や施設への影響を低減させることが必要となります。そのため、施工場所の地盤条件や周辺環境に応じて、様々な工法※1が適用されます。その中で地盤注入改良工法は、地盤に挿入した注入管を通じて数時間かけて地盤内に浸透させた注入材を硬化させ、地盤の強度や止水性を高める工法です。この工法は、他の工法に比べ、施工機械は比較的小型の装備で行うことができ、地盤の撹拌・掘削を伴わないため、既設構造物の直下や狭隘部、高さの制限がある場所での適用に優れています。しかし一方で、注入改良材にコストがかかり、また現場での作液作業※2では硬化時間の微調整や急な計画変更への対応は困難な状況でした。
 そこで当社は、材料の素材を見直すことでコスト低減を図るとともに、現場での作液作業をICT制御により自動化し、地盤改良工事における作業の効率化を実現しました。(図1参照)

本注入改良材および現場作液方法の特徴は以下の通りです。

  1. 1

    材料の見直しにより低コスト化

    注入改良材は、地盤への浸透性に優れた水ガラス系材料を採用しており、硬化後の地盤の強度や長期の耐久性において既存品と同等の性能を有しながら、素材の見直しを行い従来よりも20%コスト削減を実現しました。(写真1参照)

  2. 2

    現場での作液作業を効率化
    本注入改良材を用いた施工では、所定pH値※3を確保するように、2種類の薬液の混合割合(混合速度と混合量)を、混合槽のpH計と各薬液の供給パイプに備えた流量計のデータに基づきICTにより自動制御で行うため、硬化時間を調節することが容易になりました。(写真2参照)

 また、2020年6月30日に公益社団法人日本材料学会の「地盤改良に関わる技術認証制度」において、本注入改良材の性能および現場作液方法の有効性について技術認証を取得しました。

 今後、当社は、本注入改良材および現場自動作液を、コスト低減と現場での施工合理化を可能とする材料・製造技術として、様々な液状化対策工事や大規模地下工事での止水対策に積極的に活用を図ってまいります。

図1 地盤注入改良材の適用フロー
図1 地盤注入改良材の適用フロー
写真1 地盤注入改良材「T-GeoSiliquid」
写真1 地盤注入改良材「T-GeoSiliquid」
写真2 自動作液の制御画面例
写真2 自動作液の制御画面例
  1. ※1様々な工法:
    地盤にセメントなどを混合して固結させる工法、砂杭を設置して周辺地盤を締固める工法、地下水位を低下させる工法などの各種地盤改良工法。
  2. ※2

    作液作業:
    地盤などの施工条件に応じて、地盤への注入から硬化までの目標時間を設定し、その指標となる所定pH値に合わせるよう、現場で人力により薬液の配合を決定している。

  3. ※3

    pH値:
    薬液の硬化時間はpHに依存し、作液管理の指標となる。pHが0.1単位で増減すれば
    硬化時間は数時間単位で遅延・短縮する。