映像・IoTデータを活用した現場管理システム「T‐iDigital Field」を開発

遠隔臨場による作業効率化で、生産性を向上

2020年7月27日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、ネットワークに繋げたカメラ映像やIoT機器で得られたデータを用いて建設現場の施工状況を可視化し、工事関係者間で遠隔地からリアルタイムに情報共有できる現場管理システム「T-iDigital Field」を開発しました。またこの度、実現場において本システムの実証実験を実施し、その性能を検証しました。

 昨今、生産労働人口の減少や高齢化が進む中、労働力不足の解消や生産性向上は喫緊の課題となっています。そのため、建設現場においても、現場の施工状況をリアルタイムに把握し、工事関係者間で情報共有する方法などの整備により、現場管理を効率的に行う仕組みの確立は急務となっています。これらの状況を踏まえ、現在、国土交通省では2016年4月よりi-Constructionを推進しており、2020年3月には建設現場での遠隔臨場※1に関する試行要領を策定し、取り組みを開始しました。
 そこで、当社は新規に開発した現場管理システム「T-iDigital Field」を用いて、現場のリアルタイム映像や各種センサー等の取得データを可視化し、工事関係者が「いつでも」「どこでも」「すぐに」施工状況を共有することにより、遠隔から迅速かつ的確な現場管理を可能としました。また、ダム建設現場での実証実験において、多数の固定・ウェアラブルカメラを含むモニタリングネットワーク環境を構築し、発注者による「立会検査」や「コンクリート打設管理」などの現場管理に対する検証を行い、その性能を確認しました。本システムの概要および実証実験結果は以下の通りです。

【概要】

 本システムは、現場を俯瞰する定点カメラや作業状況を映し出すウェアラブルカメラのほか、建設機械位置や打設進捗状況などを各種センサーで得られたIoTデータにより可視化する多数の施工支援アプリケーションで構成されています。これらをリアルタイム映像で表示し、建設機械稼働状況やコンクリート性状、作業進捗などの施工情報を、作業所に設置されたモニター、スマートフォンやPCなどで遠隔から容易に閲覧することができます。(図1、写真1参照)そのため、工事関係者で素早く情報共有でき、意思決定を迅速に行い、生産性の向上を図ることが可能となります。

図1 本システムの概要(最終イメージ)
図1 本システムの概要(最終イメージ)
写真1 作業所でのモニター画面による現場管理状況
写真1 作業所でのモニター画面による現場管理状況

【実証実験結果】
 香川県発注の椛川ダム建設工事において、ダム建設地および遠隔地にある現場事務所で本システムを活用した発注者立会およびコンクリート打設管理業務を試行し、以下のような効果を確認しました。

  1. 1

    発注者立会(写真2参照)
    建設現場でのボーリング作業の検尺(削孔深度検尺でのボーリングロッド本数・長さの確認など)について、現地映像データなどに基づき遠隔臨場による立会検査を実施しました。その結果、発注者および施工管理者は、建設現場にて直接立会うことなく現場事務所からモニターで施工進捗状況の一括把握などが可能となり、建設現場への移動時間(約1時間)を削減できました。また、当社現場作業員側も、現場での立会・調整時間を削減できることから、各々の業務に対して有効なことが確認されました。なお、当該現場では昨年度実施した100件近い基礎処理工事に関する立会検査のうち、約1/3を検尺立会検査が占めており、今後は遠隔臨場を活用して大幅な立会検査の効率化が期待されます。

  2. 2

    コンクリート打設管理(写真3参照)
    施工管理者は建設現場でのコンクリート打設状況をカメラ映像や打設支援システム※3(施工支援アプリケーション)を使って確認し、現場事務所から打設コンクリートの品質確認や進捗状況に応じたコンクリートの発注などを行うことで時間を削減し、施工管理の効率化が図れます。また、熟練技術者が遠隔から工事担当の若手技術者などを指導することで、現場作業の支援と技術継承も併せて行うことが確認できました。

写真2 遠隔での発注者の立会状況
写真2 遠隔での発注者の立会状況
写真3 遠隔でのコンクリート打設管理状況
写真3 遠隔でのコンクリート打設管理状況

 今後、当社は、さらに多様なモニタリングアプリケーションを開発し、現場の作業状況をより詳細に可視化することで、本システムを用いた最適な現場管理と生産性向上を実現してまいります。また、本システムを現場外にも拡大し、専門知識を持った熟練技術者が遠隔から意思疎通を図り、建設現場と相互に連携・支援できる環境の整備を目指してまいります。

  1. ※1

    遠隔臨場
    公共工事の建設現場において、「段階確認」、「材料確認」、「立会」を必要とする作業に、ウェアラブルカメラ等を携え、撮影した映像、音声を発注者に同時配信し、双方向通信により会話しながら、遠隔からカメラ映像を確認することを示し、移動負担や立会調整にかかる時間を削減するなど受発注者の作業効率化を図るとともに、契約の適正な履行として施工履歴管理を行うものである。

  2. ※2

    GNSS(Global Navigation Satellite System)
    人工衛星を使用して地上の位置を計測する「衛星測位システム」のうち、全地球を測位対象とすることができるシステム。アメリカが運用するGPS(Global Positioning System)を含む総称。

  3. ※3

    打設支援システム
    本システムは、デジタルツイン技術を取り入れ、建設機械や運搬車両に搭載したGNSSデータやコンクリート発注時の入力データなどの異なる複数のデータを統合して、現場でのコンクリートの打設位置、配合情報、予定数量、既打設量などの進捗状況のほか、時間当たりの打設速度、運搬車両位置のマップなどを表示する。施工管理者は、これらの情報に基づき、施工状況を容易に把握することができ、効率的に現場管理を行うことが可能となる。