コンクリート最適打込み計画支援システム「T-Con.PAS」を開発

コールドジョイント発生リスクを低減し、施工品質を向上

2020年7月6日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、現場打ちコンクリート施工において最適な打込み計画を自動作成する支援システム「T-Con.PAS」(Taisei Concrete placement Planning Assist System)を開発しました。本システムの適用により、コンクリート打重ね時に生じるコールドジョイント発生リスクを低減し、施工品質の向上が可能となります。この度、天ケ瀬ダム放流設備建設工事(京都府)など2件のダム建設工事において、本システムを試行し、その有効性を検証しました。

 コンクリート構造物の品質確保には、コンクリート施工時の「打込み時間」を適切に管理することが重要となります。通常、コンクリートを連続して打設するには、先に打込んで固まり始めたコンクリートに新しいコンクリートを打重ねるまでの「打重ね時間間隔」※1に留意が必要です。打重ね時間間隔が開くと境界面にコールドジョイント※2が発生し、構造物の品質低下につながることがありました。そのため、従来は、打重ね時間間隔ができるだけ短くなるように構造物の形状、コンクリートポンプ車の配置や打込み量など様々な施工条件を元に現場技術者が打込み順序を計画していましたが、検討項目が多岐に渡るため、最適な計画策定には多くの課題がありました。
 そこで、当社は、コールドジョイント発生リスクを低減し、施工品質の向上を図るため、打重ね時間間隔が短くなるよう打込み計画を自動作成する、コンクリート最適打込み計画支援システム「T-Con.PAS」を開発しました。

「T-Con.PAS」の特徴および検証結果は以下のとおりです。

【特徴】

  1. 1

    自動計算により最適な打込み計画を提示
    1台のコンクリートポンプ車で施工できる範囲(ブロック配置※3毎)やポンプ車の圧送能力・台数・配置などの施工条件を入力し、最適な打込み順序や打重ね時間間隔を瞬時に自動計算します。その結果を3次元画像で可視化して確認することが可能で、ポンプ車の必要台数や最適な配置などを事前に検討できます。

  2. 2

    急な計画変更にも柔軟に対応
    施工中の急な計画変更(コンクリート供給能力や可動ポンプ車台数の変更など)が生じた場合でも、施工条件を再入力することで、最適な打込み順序などを再計算し、迅速な対応が図れます。

  3. 3

    誰でも最適な計画策定が可能
    技術者の経験に依存せず、誰でも最適な打込み計画を策定することができます。

【検証結果】
 上記のダム建設工事において本システムを施行した結果、最大打重ね時間間隔が概ね2割程度短縮でき、コールドジョイント発生リスクの低減効果が確認されました。これにより施工時の品質向上やコストの低減、事前検討作業の短縮による生産性向上などの効果が期待できます。

 今後、当社は、土木・建築分野を問わず、本システムをコンクリート構造物のさらなる品質向上に貢献する技術として、施工現場への導入を進めてまいります。

写真1 コンクリート打込み状況(天ヶ瀬ダム) (コンクリートポンプ車2台で実施

写真1 コンクリート打込み状況(天ヶ瀬ダム)
(コンクリートポンプ車2台で実施)

図1最適打込み順序の検討結果(天ケ瀬ダム)

図1 最適打込み順序の検討結果(天ケ瀬ダム)

  1. ※1

    打重ね時間間隔:
    コンクリートを層状に打重ねる場合に、先に打込んだコンクリートの打込み終了から打重ねるコンクリートの打込み開始までの時間の差

  2. ※2

    コールドジョイント:
    コンクリートを層状に打ち込む際、先に打込んだコンクリートと後から打込んだコンクリートとの間が完全に一体化していないために生じる不連続面

  3. ※3

    ブロック配置:
    コンクリートを打込む範囲における打込み順序や打重ね時間の計算に必要となる施工時の分割エリア