「凍結しない加泥材」を用いたシールドマシンのビット交換手法を開発・適用
交換作業の手間を削減し、安全かつ効率的に実施
2020年3月5日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、富士化学株式会社(社長:河本嘉信)、株式会社精研(社長:上野俊信)と共同で、大深度におけるトンネル工事で凍結工法※1を用いて施工する際、「凍結しない加泥材※2」を用いたシールドマシンのビット交換手法※3を開発し、名古屋市上下水道局が発注する名古屋中央雨水幹線下水道築造工事(その2)において、ビット交換作業を安全かつ効率的に実施いたしました。
従来のシールドトンネル工事では、施工中にシールドマシンのビット交換作業を実施する際、適用実績が多く信頼性の高い凍結工法を採用し、切羽部およびシールドマシン外周部の地盤を凍結させてから交換作業を行ってきました。しかし、この工法ではシールドマシンの面板が周辺地盤と強固に凍着してしまうため、面板前面・側部の凍着部をすべて人力で斫り、面板直径と同等の大きさで奥行1m程度の作業空間を構築してから、ビット交換作業を行う必要があり、多大な労力と時間を要していました。
そこで当社ほか2社は、新たに開発した「凍結しない加泥材」を予め面板前面に注入することで、面板と凍結地盤との凍着を防いだビット交換手法を開発し、実際のシールドトンネル工事への適用により、大深度での凍結条件下で、安全かつ効率的にビット交換が実施できることを確認しました。
本ビット交換手法の特徴は以下のとおりです。(写真1、図1参照)
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凍結地盤内での面板の回転により、凍土掘削範囲を最小化
「凍結しない加泥材」が掘削土と攪拌され、面板前面と凍結地盤の凍着が防げるため、凍結地盤内でシールドマシンの面板の回転が可能となり、凍土の掘削範囲を最小化することができます。これにより、従来のような面板前面に大きな作業空間を構築する斫り作業が不要となります。 - 2
ビット交換のための作業空間構築に係る労力を半減
面板上半部の作業空間の構築により凍結地盤の掘削量を1/2に削減でき、凍土掘削期間も1/2に短縮されることから、狭隘で低温となっている空間内での掘削作業を半減させることができます。 - 3
足場を設置することなく、ビット交換作業を安全・効率的に実施
面板を半周回転させた状態でのビット交換が可能となるため、従来の面板前面での支保工を用いた足場が不要となり、面板上半分の必要最小限の作業空間内で、安全で効率的な交換作業が行えます。
今後、当社ほか2社は、凍結工法を用いた大深度でのシールドトンネル工事において、従来よりも安全かつ効率的に実施できるビット交換手法として、積極的に提案してまいります。
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凍結工法:
地盤中に所定間隔で冷却液を循環するパイプを地上等から設置し、冷却液を流すことで強制的に土中の間隙水を凍らせ、確実に地盤を固める工法 - ※2
加泥材:
土圧式シールド工法において、掘削した土砂に練り混ぜることにより、塑性流動性と止水性を有する泥土に改良するための添加剤 - ※3
ビット交換手法:
シールド工事の長距離化・大深度化に伴い、シールドマシン前面に設置された土砂掘削用のカッタービットが摩耗するため、施工中に安全かつ迅速に交換するための方法