多層フラスコを用いた多機能細胞培養システムを開発

培養操作を自動化し、作業効率を向上

2020年2月26日
大成建設株式会社
四国計測工業株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)と四国計測工業株式会社(社長:川原昭人)は共同で、多層フラスコを用いた細胞培養操作において、容器姿勢制御、恒温維持、詳細観察などの機能を1台の装置に集約し、自動化した「多機能細胞培養システム」を開発しました。本システムの適用により、操作の作業効率を向上させることが可能となります。

 近年、新たな医療技術として遺伝子治療や再生医療が注目されています。このような医療に用いられる遺伝子治療薬や細胞医薬品などの製造では、培養容器として多層フラスコを用いる施設が増加しています。
 多層フラスコを用いた培養では、重量のある容器の姿勢を変え、各層への培養液の注入・排出と観察を繰り返し実施します。そのため、取扱いや操作手順が複雑であることや、数日に1回程度、容器内の培養液を交換する必要があり、これまで作業者への大きな負担となっていました。また、培養液交換や観察などを行う際、多層フラスコを恒温槽から一旦取り出している間は培養に適した温度やガス濃度などの環境を維持できず、培養に適した環境を再現できない等の課題がありました。

 そこで、両社は、多層フラスコへの培養液の注入・排出時に、従来は手作業で行われていた容器の姿勢変更や流路開閉などの操作を機械化し、恒温装置、観察装置と一体化させて一連の操作を自動制御する「多機能細胞培養システム」を開発しました。

 本システムの特徴は以下のとおりです。(図1、写真1参照)

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    培養時の操作を機械化

    回転モーターを用いて前後・左右二方向に多層フラスコの姿勢変更を行うことで、作業者が容器を回転させる作業が無くなるため、作業負担が軽減されます。また、ピンチバルブの押し挟み操作も機械化し、送液チューブの流路開閉を自動で行うことで、操作に必要な流路開閉の誤操作を防止します。

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    操作で用いる様々な装置を一体化

    培養液の注入・排出時に多層フラスコを回転させる装置、一定温度に維持する恒温装置、観察装置を一体化させたことで、培養中の各操作に対応した多層フラスコの運搬などが不要になり、恒温槽から取り出すことなく適した環境を維持しながら、一連の操作を行うことができます。

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    培養中の各操作を自動制御

    制御用PCを用いて培養中の全ての操作をプログラミングすることで、必要な注液・排液などの操作を自動で実行し、その状況をデータとして記録することができます。

 今後、当社と四国計測工業は、培養操作において本システムを用いた有効性を実証試験で確認した後、遺伝子治療薬、細胞医薬など細胞培養を伴う医薬品製造への提案を行い、高品質で高効率な生産施設の実現を目指してまいります。

図1 本システムの概要
図1 本システムの概要
『テコレップ-Lightシステム』を用いたビル解体 実施状況(写真2)
写真1 細胞培養装置概要
  1. ※多層フラスコ:

    細胞の大量培養を高効率に行うため、シャーレのような培養皿を複数枚重ねた層状にして表面積を大きくし、各層に一度に細胞培養液を注入・排出できる構造にした多段培養容器。