技術センターに省スペースで高性能な大型風洞装置を新設

風圧のリアルタイム可視化など実用性重視した実験を展開

2020年1月8日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、技術センター(横浜市戸塚区)に省スペース化した大型風洞装置を新設し、2019年12月より運用を開始しました。本装置は、大型模型が設置でき、新規に開発した計測結果(風圧)リアルタイム可視化システムに、解析結果(気流)などを同時に表示する機能を追加したことで、より実用性を重視した風洞実験が可能となりました。

 建物に作用する風の力や建物周辺で発生する風の状況は、建物の形状や規模、風向・風速、建物周辺の状況等(地形や周囲の建物などの影響)により大きく変化します。そのため、当社では1984年に技術センターに風洞装置を設置し、対象の建物とその周辺区域に対して、模型を用いた風洞実験を実施して正確な評価を行い、建物に作用する風の力を構造、外装材の耐風設計に、建物周辺の風環境を建物形状や配置の計画・設計、防風対策などに反映してきました。

 しかし、建物の高層化や市街地の高密度化に伴い、風環境も複雑化しており、さらに、気候変動により激甚化した台風などによる建物や市街地に及ぼす影響などを正確に把握するためには、大型模型を用いて風況を検証・評価できる、より実用的で高性能な風洞装置を備えた施設が必要でした。

 この度、当社は、高さ400m級の超高層建物とその周辺市街地の風況把握にも対応可能な実用性と風洞装置の操作性を重視した風洞実験施設として、小型送風機を組み合わせて省スペース化を図り、これまで目に見えなかった風圧の計測結果をリアルタイムに可視化するシステムを併せ持つ高性能な大型風洞装置を新設し、運用を開始しました。

 大型風洞装置およびリアルタイム可視化システムの特徴は、以下の通りです。

  1. 1

    小型送風機を組み合わせ、省スペース化を実現(写真1・2、表1参照)

    ・本装置は、6台の小型軸流送風機から構成され、従来に比べ装置全体の長さを2割程度削減し、省スペース化を実現。
    ・送風機の個別制御に加え、風洞内の気流の速度や乱れを制御して最適化する装置の導入により、様々な縮尺の模型など実験条件に合わせて送風する気流を自在に調整可能。
    ・大型模型を設置して風圧・風況を検証・評価できる、実用性を重視した実験が可能。

  2. 2

    リアルタイム可視化システムで風圧や風況の視覚化を実現(図1参照)

    ・実験で計測しながら、目では見ることができない風の力をリアルタイムに3次元アニメーションで表示。

    ・気流などの解析結果を重ね合わせた表示も可能となり、建物に作用する風の状況を より早く、視覚的に把握することができるため、設計時において、関係者間での迅速な合意形成を図ることが可能。

 今後、当社は、本大型風洞装置を都市再開発などの大規模プロジェクトに積極的に活用するとともに、風関連の研究開発を加速させ、高い耐風性能を備え、より安全性に優れた建物を顧客に提供してまいります。

写真1 新風洞装置内観
写真1 新風洞装置内観
写真2 小型軸流送風機外観
写真2 小型軸流送風機外観
図1 リアルタイム可視化システム概要 (リアルタイムの計測結果(風圧)と解析結果(気流)を同時に表示)

図1 リアルタイム可視化システム概要
(リアルタイムの計測結果(風圧)と解析結果(気流)を同時に表示)

表1 風洞装置仕様

項目概要
方式

室内回流式エッフェル型風洞

計測部寸法

・幅3.2m×高さ2m×長さ23.8m
・ターンテーブル直径3m

最大風速 23m/s
送風機

軸流送風機6台

実験項目

多点風圧実験、風環境実験、空力実験、空力振動実験、可視化実験

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