世界最高級強度の吹付けコンクリート「T-HPSC 100」を開発

脆弱な地山条件下におけるトンネル支保工の施工を効率化

2019年10月29日
大成建設株式会社
BASFジャパン株式会社
株式会社デイ・シイ

 大成建設株式会社(代表取締役社長:村田誉之)、BASFジャパン株式会社(代表取締役社長:石田博基)、株式会社デイ・シイ(代表取締役社長:神長俊樹)は共同で、トンネル支保工※1に用いる、世界最高級強度で優れた施工性を有する吹付けコンクリート「T-HPSC 100」※2を開発しました。本材料の適用により、脆弱な地盤などの地山条件でも二重支保工などの対策が不要となり、支保工を効率的に施工することが可能となります。

 山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートは、掘削中のトンネル形状を維持するために施工する支保工の一部として用いられており、掘削したトンネルの変形度合いに応じ、適切な強度のコンクリートを使用しています。しかし、脆弱な地盤や高い圧力が作用する地盤など地山条件が厳しい状況では、吹付けコンクリートに加え、支保工を二重に用いるなどの対策を施す必要があり、施工時の作業効率向上に課題がありました。
 そこで当社とBASFジャパン(株)、(株)デイ・シイは、このような厳しい地山条件でも効率的に施工するため、従来の吹付けコンクリート強度を大きく上回る世界最高級強度を持ち、かつ施工性に優れた吹付けコンクリート「T-HPSC 100」を開発しました。さらに実証試験を行い、本材料と従来の吹付けコンクリートの性能を比較検証し、その優位性などを確認しました。

 本材料の特徴は以下のとおりです。(表1、写真1、2参照)

  1. 1超高強度吹付けコンクリートを用い、支保を効率的に施工
    施工に用いる吹付けコンクリートの強度は、従来の2倍以上(設計基準強度72N/mm2、実強度100N/mm2)であるため、脆弱な地山条件に適用する二重支保工などの対策が不要となり、トンネル支保を効率的に施工することができます。
  2. 2優れた付着性により、吹付時のはね返り量を抑え、材料ロスを低減

    本材料は、ノズルでの吹付時に同時混入する液体急結剤の作用により高い付着性を有しており、従来の吹付けコンクリートに比べ、施工時のはね返り量(付着せずに落下する量)が抑えられ、材料ロスを低減できます。

  3. 3専用吹付材を用いて、既存の吹付け設備・装置を利用した施工が可能
    実強度100N/mm2以上の超高強度コンクリートは粘性が非常に高く、そのままでは吹付けコンクリート材料での使用は困難でした。今回、新規に開発した専用吹付材を用いることで、コンクリートの粘性を大幅に低下させ、流動性を確保することにより、既存の吹付け設備・装置を用いて施工することができます。
  4. 4施工時に発生する粉塵濃度が低く、良好な作業環境に改善
    本材料による吹付けコンクリート施工時に生じる粉塵濃度は、従来の吹付けコンクリートに比べ1/3程度と大幅に低くなり、良好な作業環境を構築できます。
  5. 5従来方式と同等レベルのコストで工期短縮が可能
    「T-HPSC 100」の材料コストは、条件により、施工性向上や材料ロスの低減で、従来の高強度吹付けコンクリートと比べて、材工込みのコストを同等としたまま、最大50%程度の工期短縮が見込めます。

 今後、当社は、高圧が作用する地盤や脆弱な地盤などの地山条件を有する山岳トンネル工事に対して、安全で効率的な施工を実現するための方策として、本材料の適用を積極的に提案してまいります。

表1 「T-HPSC 100」の特性
写真1 模擬トンネルにおける検証状況
写真1 模擬トンネルにおける検証状況
写真2 厚吹きを可能とする優れた付着性
写真2 厚吹きを可能とする優れた付着性
  1. ※1トンネル支保工:
    トンネルを掘削してから、覆工(トンネル内面をコンクリートなどで固めること)するまでの間、掘削した断面を確保し、地山の崩壊や変形を防ぎ、安全に作業ができるように地山を支持するコンクリート製や鋼製の構造物。
  2. ※2「T-HPSC 100」:
    Taisei-High Performance Sprayed Concreteの頭文字を抽出し、実強度:100N/mm2の超高強度吹付けコンクリートの名称。