炭素繊維強化プラスチック部材「T-CFRP Beam(FR)」を開発・適用

超軽量の部材特性を活かした効率化施工、大スパン架構を実現

2019年10月9日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、超軽量な炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP)部材「T-CFRP Beam(FR)」を開発し、この度、技術センター(神奈川県横浜市戸塚区)本館増築建屋の屋根部材に国内で初適用しました。

 近年、日本では建築物を長持ちさせて有効活用するストック型社会の実現に向けた様々な取り組みが行われており、建設分野では、今後、リニューアルやリノベーションなどによる既存建築物の再利用が更に進むと考えられます。しかし、これまでのように鉄骨などの重い構造部材を用いて既存建築物の大規模改修や増改築を行う場合、建築物の荷重条件や重機の使用に制限があり、また、作業空間や資材搬入などに制約を受ける狭隘な場所での施工は困難とされていました。

 そこで当社は、このような課題を解決するため、軽量でありながら一般的な構造部材と同程度以上の強度を有する材料として、既に耐震補強などの分野で利用されているCFRPを用いた構造部材「T-CFRP Beam(FR)」を開発しました。

「T-CFRP Beam(FR)」の特長は以下のとおりです。(写真1、図1~図3参照)

  1. 1超軽量のCFRPプリプレグ※1を任意に積層・成形することが可能なため、建築物の用途に応じて部材の剛性、強度および形状を自由に設定できます。
  2. 2今回、技術センター増築建屋に適用したCFRP部材の重量は、鉄骨の約1/5という超軽量であり、荷重が問題となる既存建屋内部の増改築や重機の使用が難しい場所でも人力での運搬・施工が可能となります。また部材の接合もH型鋼材と同様に行うことができ、大スパン化に対応させることができます。
  3. 3耐火建築にも適用可能とするため、CFRP部材に難燃木材およびその他の耐火被覆を組み合わせた独自の耐火被覆を施すことで、従来と同等の耐火構造性能を確保できます。

 今後、当社は、本材料の特性を活かし、これまで施工が困難であった既設建築物の大規模改修、屋上等での増改築などに対して、積極的に提案を図ってまいります。

写真1  CFRPプリプレグ(左)を積層して構築したCFRP部材のモックアップ(右)
写真1 CFRPプリプレグ(左)を積層して構築したCFRP部材のモックアップ(右)
図1 技術センターでのCFRP適用架構事例
図1 技術センターでのCFRP適用架構事例
図2 CFRP躯体と耐火被覆断面事例
図2 CFRP躯体と耐火被覆断面事例
図3 CFRP適用架構事例イメージ
図3 CFRP適用架構事例イメージ


  1. ※1

    CFRPプリプレグ:炭素繊維に樹脂を含侵させたシート状の材料で、1枚あたり厚さ0.25mm程度のシートを何層にも積層して任意の厚さや形状に成形する。