病院内の電波環境を自動測定し、リアルタイムにモニタリング
電波環境可視化技術「T-Hospital® Wireless Viewer」の機能を拡張
2019年9月2日
大成建設株式会社
学校法人埼玉医科大学
大成建設株式会社(社長:村田誉之)と学校法人埼玉医科大学(学長:別所正美)は、2018年に当社が開発した病院内の電波環境を可視化する技術「T-Hospital Wireless Viewer」の機能を拡張し、医療情報機器の所在の自動取得や電波状況などを自動測定することで、病院内の電波環境をリアルタイムにモニタリングできる技術を新たに開発しました。本技術の適用により、様々な医療機器を取り扱う病院スタッフが、病院内で日々変化する電波環境をリアルタイムに把握することができ、電波トラブル※1対策の立案や電波環境の改善を迅速かつ的確に行うことが可能となります。
病院や救急救命センターでは、生体情報モニタや電子カルテなど電波を利用した医療情報機器の導入が急速に進み、患者をサポートする環境が整備されてきました。一方、病院スタッフが使用するモバイル端末、患者の持込むWiFi等、様々な通信情報機器の使用により電波環境が複雑化しており、電波がつながらない、機器が正常に動作しないなどといった電波トラブルが増加しています。そのため、これまでは医療情報機器ごとに専門業者が電波環境の測定を行い、その都度対策を講じていましたが、日々変化する電波環境をリアルタイムに把握することは困難な状況でした。
そこで当社では、医療情報機器の所在や電波状況を把握するための技術として「T-Hospital Wireless Viewer」を開発し、病院の計画・設計・施工および運用に至る各段階で電波環境の評価を行い、医療情報機器を安心して使用できる環境を提供するサービスを2018年6月から展開してきました。
さらに、この度、当社と埼玉医科大学は、「T-Hospital Wireless Viewer」の機能を拡張させ、病院内各所の電波環境を自動測定した結果を、リアルタイムにモニタリングできる技術を開発しました。
本技術の特徴は以下のとおりです。(図1参照)
- 1病院スタッフらが日々利用する医療用台車に取付けた測定機器を用いて、台車の位置情報を自動取得し、さらにその周辺の医療情報機器等の電波情報(強さ・混雑状況・ノイズなど)を自動で測定します。これらの情報は、クラウドサーバを介して病室毎の電波環境をリアルタイムにモニタリングすることが可能で、病棟全体の状況などを随時確認することができます。
- 2測定されたデータはクラウドサーバに保管され、その履歴を参照することが可能で、医療情報機器ほか通信情報機器の有無や電波環境の変化状況などを履歴から確認し、電波環境の悪化につながる要因を把握することができます。
- 3電波環境の悪化やトラブルが発生した場合には、測定データを基に通信不良の「原因」と「対策」を電波管理レポートとして、病院内外の関係各所にあるモニタに表示する機能を備えています。そのため、単純なトラブル対応であれば、専門業者に頼ることなく、病院スタッフだけで電波環境の改善を行うことができます。
今後、当社と埼玉医科大学は、埼玉医科大学関連施設において、2019年8月から開始する本技術に関する実証実験により、その性能(病院スタッフによる操作性、システムの安定性、電波管理レポートの信頼性など)を検証し、2020年度より自社設計の病院を対象として本技術の導入を進めるなど積極的な展開を図ってまいります。
- ※1電波トラブル:携帯電話、LED 照明のほか施設内の受信アンテナ配置、病室レイアウトなどの影響により、電波が届かない、混信・ノイズによる干渉の要因で、医用テレメータや電子カルテなどの医療情報機器が正常に動作しないトラブルや、データが診察室やナースステーションに届かない状況が発生することがあり、電波環境の不適切な状況が医療施設で問題となっている。