コンクリート吹付作業の遠隔操作技術「T-iROBO® Remote Shotcreting」を開発

山岳トンネル工事での吹付作業の安全性向上と環境改善を実現

2019年7月17日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、山岳トンネル工事において、切羽(掘削面)でのコンクリート吹付作業に使用する遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発しました。本技術の適用により、吹付作業の安全性向上と環境改善を実現することが可能となります。

 山岳トンネル工事における従来のコンクリート吹付作業では、操作者が切羽近くに立ち、切羽への吹付仕上りの状況を目視で確認しながら、吹付機をリモコンで操作していました。そのため、操作者は切羽からの土砂の崩落、吹付材の跳ね返り等による危険性やコンクリート吹付で発生する粉塵の影響などで作業効率が低下する可能性がありました。
 また、厚生労働省は「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」※1(平成30年1月18日改正)において、切羽への作業員の立入りを制限し、切羽近くでの作業を可能な限り機械化する方策の検討を推進しています。

 そこで、当社は、山岳トンネル工事での作業の安全性向上と環境改善を図るため、2016年に開発済みの遠隔操作システム「T-iROBO Remote Viewer」※2を応用し、コンクリート吹付作業に適用した遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発しました。また、本技術を実際の山岳トンネル工事(南山造成 読売ランド線トンネル築造工事)での吹付作業で実証し、HMDを用いた遠隔操作による吹付作業を安全かつ効率的に実施できることを確認しました。

「T-iROBO Remote Shotcreting」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1本装置は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、魚眼レンズ付きカメラ2台、カメラボックス、カメラボックスが移動可能な走行レールおよびLED投光器で構成されています。魚眼レンズ付きカメラは、粉塵・吹付材の付着を防ぎ、視認性の向上を図るため、カメラボックス内部に設置しました。(写真1参照)本装置一式があれば、吹付機自体の改造や装備追加などを行う必要がありません。
  2. 2魚眼レンズの採用により、超広角の画像を取得でき、カメラの向きを頻繁に変える必要がありません。また、切羽左右への吹付け作業では、カメラボックスとLED投光器を一体化してレール上を移動できるため、吹付方向の切替えが容易に行えます。
  3. 3HMDと魚眼レンズ付きカメラ2台の組合せによって、吹付機操作者は切羽から十分離れた位置で、切羽近くに居るような遠近感・臨場感を持って吹付作業を行うことが可能となり、通常のカメラ単体では困難な吹付厚さの管理を行えます。(写真2参照)
  4. 4吹付機操作者は、座った姿勢での遠隔操作が可能となるため、操作者の身体的負担が軽減されるとともに、作業効率の向上が見込まれます。

 今後、当社では、本技術を全国の山岳トンネル工事に展開し、改良を進めながら、吹付作業における安全性向上と切羽での無人化施工を進めてまいります。

カメラ配置状況
写真1 本技術の装置構成
吹付機操作者、切羽監視員、吹付ホース介添者(カメラ移動補助)は切羽直近からは離れた位置で作業
写真2 HMD装着時の吹付作業状況
  1. ※1厚生労働省ガイドライン:「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」(平成30年1月18日改正)において、「事業者は、肌落ちによる労働災害を防止するため、切羽への労働者の立入りを原則として禁止し、真に必要のある場合のみ立ち入らせるようにすること。また、この措置を実効性のあるものとするために、~中略~作業等の完全な機械化等を積極的に進めること」と指導している。
  2. ※2T-iROBO Remote Viewer:臨場型遠隔映像システム。2台の魚眼カメラにより超広角映像を取得し、安全な操縦場所まで映像を伝送(無線 or 有線)し、パソコンを介してHMDに表示させて現地の映像を確認する。操縦する際、操縦者が頭を上下左右に動かすとHMD に表示される映像も同期して上下左右に変化するため、重機の周囲状況を容易に把握することができる。また、視差をもった2 つの映像をHMDに表示させることで操縦者は視差映像から遠近感を得ることができる。