遠隔操作システムを用いた細胞培養操作向けプロトタイプを開発
研究所、医薬品製造工場での生産性向上に貢献
2019年7月2日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、遠隔操作システムを用いて細胞培養におけるピペット操作※1などを行うプロトタイプを開発しました。
当社は、2016年よりロボットを用いた遠隔操作システムの開発を進め、2018年にはロボットと第5世代移動通信システム「5G」やマルチモーダルAIを組み合わせたシステムを研究開発するなど、生産施設向けの自動化に係る技術開発を進めております。今回、当社は開発済み遠隔操作システムのさらなる用途拡大を図るため、微妙な動きや加減速が必要な動作など直感的な操作を行う作業工程のうち、主に細胞培養の工程で行われるピペットを用いた液体の吸引や吐出などの細かな作業を容易に遠隔から操作するシステムのプロトタイプを開発しました。
本システムは、研究所や医薬品製造工場における細胞培養操作への適用を想定し、下記のような特徴を有し、導入による効果が期待されます。(図1、写真1参照)
本システムの特徴
- 本システムで使用するロボットは、操作側、遠隔側共に「人協働ロボット※2」を採用し、細胞培養に適した安全で安定した操作が可能です。
- ロボットが操作するピペット本体の駆動部に小型高精度サーボモータを採用することで、操作側から遠隔側のロボットにピペットの微妙な動きを正確に伝え、あたかもその場で作業するかのような操作が可能です。
- ロボット操作時の取得データ(ロボット挙動、ピペット動作、映像等)を保存することができるため、ピペットを用いた詳細な動作が細胞に与える影響を分析することが可能となります。
期待される効果
- 本システムの導入により、熟練操作が必要な細胞培養を遠隔から操作することにより、細胞培養者1名で複数施設での細胞培養を行うことが可能となり、生産性の向上に貢献することができます。
- 細菌培養において汚染源である人が直接操作する必要がなくなり、遠隔から操作が可能となるため、人由来の異物混入リスクを低減できます。
- 保存した操作データを詳細に分析することで、細胞培養の品質を確保するために有効な操作方法を確立することができます。更に蓄積したデータにより、IoT、AI技術を融合した細胞培養操作の自動化へ繋げることが期待されます。
- 本システムは、5Gにより問題なく動作することが既に確認されており、将来5G通信による遠隔操作データを蓄積、分析することで、属人化している操作を再現することができます。
今後も、当社は、遠隔操作技術の普及展開を推進し、研究所や医薬品関連の生産施設における生産性向上の実現に向けた取り組みを継続して参ります。


- ※YouTubeにリンクしています。
- ※1ピペット操作:細胞培養において、ピペットと呼ばれる注射器状の実験器具を用いて行う、細胞を含む少量液体の吸引、吐出や計量などの細かな操作
- ※2人協働ロボット:操作側、遠隔側のロボットアームには、株式会社デンソーウェーブと株式会社デンソーが共同開発した繊細な動きや力加減にも追従可能な小型6軸協働ロボットCOBOTTA®を採用。