トンネル覆工コンクリートモニタリングシステム「T-iMonitor Tunnel Concrete」を開発

センサー情報を一元管理し、打設状況の見える化と更なる品質向上を実現

2019年7月2日
大成建設株式会社
岐阜工業株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)と岐阜工業株式会社(社長:宗像国義)は共同で、鋼製移動式型枠(以下、セントル)に設置した温度、圧力などの各種センサーを用いて山岳トンネル覆工コンクリートの打設状況をリアルタイムに把握し、計測データを自動で記録するモニタリングシステム「T-iMonitor Tunnel Concrete」を開発しました。本システムの適用により、各種センサーで得られた情報を一元管理し、覆工コンクリートの打設状況の「見える化」と、更なる品質向上を実現することが可能となります。

 山岳トンネル工事では、トンネル壁面の仕上げで行う覆工コンクリート打設作業(図1参照)において、材料分離を発生させず、空隙が残らないようコンクリートを型枠内に充填して締固める必要があり、覆工コンクリートの打設状況を常に管理しながら確実に施工することが重要です。しかし、現状では、施工管理担当者がセントルに設置されている打設窓から目視により打設状況を確認しており、すべての打設箇所の確認は困難でした。さらに、施工時の打設高さなど打設履歴情報が紙に記録されているため、記録整理や帳票作成などの施工管理業務に時間を要することや、関係者間での情報共有が困難などの課題がありました。

 そこで、当社と岐阜工業は、これらの課題解決のため、セントルに設置した多数のセンサーから得られた情報を一元管理し、打設状況の見える化を図り、さらに計測データを記録・分析し、今後の打設に活用することで覆工コンクリートの更なる品質向上を実現するモニタリングシステム「T-iMonitor Tunnel Concrete」を開発しました。また、本システムを当社施工の道路トンネル工事(岩手県宮古市 国道106号磯鶏地区道路工事)に適用し、その性能を実証しました。

「T-iMonitor Tunnel Concrete」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1センサー情報を一元管理し、打設状況を見える化(図2、図3参照)
     本システムは、感知センサー(合計161箇所)で計測した打設高さ、温度センサー(合計15箇所)による打設中および打設後のコンクリート温度、および圧力センサー(合計15箇所)によるセントル面板に作用する荷重の情報をリアルタイムに取得・一元管理し、モニター画面で打設状況を見える化します。また、品質管理のため、赤外線センサーで自動的に感知した打設時のコンクリートミキサー車の位置を同時に記録することにより、どの車両から供給されたコンクリートがトンネルのどの部分に打設されたかを確認することが可能となります。
  2. 2施工中の覆工コンクリート品質管理に活用
     施工時の各種センサーの計測データは自動で記録されるため、以下に示す覆工コンクリート品質管理に活用することができます。
    • 打設中、打設後の覆工コンクリートの温度データから算出した積算温度に基づくコンクリート強度の推定
    • セントル面板に作用する荷重の常時監視による打設速度管理や天端部での充填状況確認
     
     また、これらのデータは常に現場打設作業にフィードバックが可能であり、覆工コンクリートの更なる品質向上に貢献できます。
  3. 3施工管理業務を省力化
     本システムでは、各種センサーにより計測されたデータが自動的にクラウド上に記録されるため、煩雑であった施工管理業務の省力化と情報共有化につながります。
  4. 4計測データを維持管理・補修に有効活用
     トンネル供用後の維持管理・補修において、経年劣化による亀裂や剥離などが発生した際に、本システムにより記録・分析された計測データに基づき、要因分析を行い、その対策を策定するなど有効活用することができます。

 今後、当社は、トンネル覆工の施工状況に合わせて本システムの機能や仕様などに改良を加えながら、山岳トンネル工事現場に積極的に展開し、更なるトンネル覆工コンクリートの品質向上を図ってまいります。

図1 覆工コンクリート打設作業
図1 覆工コンクリート打設作業
図2 各種センサー配置展開図
図2 各種センサー配置展開図
図3 覆工コンクリート打設時のモニタリングシステム画面
図3 覆工コンクリート打設時のモニタリングシステム画面