UFCを適用した構造物の優れた耐久性能が実証

酒田みらい橋および東京モノレール軌道桁の経年調査により健全性を確認

2019年4月5日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、超高強度繊維補強コンクリート※1(以下、UFC)を適用した、2002年に竣工した国内初のPC歩道橋「酒田みらい橋※2」および2007年に竣工した国内初のモノレール軌道桁「東京モノレール軌道桁※3」において、この度、経年調査を行い、竣工から十数年経過した現在でも、UFCを適用した構造物の優れた耐久性能が維持され、健全であることを確認しました。

 UFCは、従来の普通コンクリートに比べて高強度、高緻密および高耐久な材料であり、耐久性能については、推定式に基づく予測結果などから設計耐用期間は100年とされています。当社は、これまでにこのUFCを適用した歩道橋、道路橋、鉄道橋、軌道桁、床版などインフラ構造物の件数および使用数量(m3数)では、国内でNo.1かつ世界でもトップレベルを達成しています。

 当社では、これまでも定期的にUFCを適用した構造物に対する経年調査を行い、耐久性能を実証しています。今回も発注者らと共同で「酒田みらい橋(供用から約15年経過)」と「東京モノレール軌道桁(供用から約10年経過)」を対象に、経年調査を実施しました。

 今回実施した調査項目および結果は以下のとおりです。

調査項目酒田みらい橋東京モノレール軌道桁
構造物全体の外観目視調査 外観の変状や点さびの進展などが生じていない
塩化物イオンの侵入深さ
一軸圧縮強度試験
1~2mm 0mm
UFCの強度低下や耐久性に起因する劣化は生じていない
構造物の固有振動数 1.37Hz(竣工時)1.37Hz(調査時) 3.42Hz(竣工時)3.39Hz(調査時)
建設当時と変化なし→ ひび割れの発生や導入プレストレスの減少、支承部の損傷等の劣化に起因する剛性低下が生じていない

 上記の調査結果より、UFCを適用した2つの構造物は竣工後10年以上経過しても、いずれも優れた耐久性能を維持しており、構造物の健全性が確認できました。また、今回の調査結果から、UFCを適用した構造物では、構造物のメンテナンスに関わる作業手間や費用負担が大幅に軽減されることが期待されます。

 今後、当社は、UFCを適用した構造物に対して経年調査を継続し、長期に渡る耐久性能に関するデータを蓄積するとともに、UFCの更なる技術開発に活かし、様々な構造物への展開を進めてまいります。

写真1 UFCを適用した実構造物の現状
写真1 UFCを適用した実構造物の現状
図1 UFCと普通コンクリートの耐久性能比較
図1 UFCと普通コンクリートの耐久性能比較
(耐久性の劣化要因となる塩化物イオン侵入予測値の経年変化)
  1. ※1超高強度繊維補強コンクリート:圧縮強度の特性値が150N/mm2以上、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm2以上、引張強度の特性値が5N/mm2以上の繊維補強を行ったセメント質複合材。躯体には鉄筋や補強鋼材が不要となることから、部材厚を薄くすることができ、構造物の自重を大幅に軽減することが可能となる。
  2. ※2酒田みらい橋:2002年に日本で初めて当社がUFCを適用したPC歩道橋。(2002年10月供用開始、2017年8月に供用15年の調査を実施。)山形県酒田市最上川の河口から約2kmの位置に架橋されており、満潮時における海水の逆流や、日本海側からの飛来塩分を含んだ季節風が吹き付けるなど、塩害環境の厳しい中で供用中。旧橋の架け替えを行う際、従来のコンクリート橋ではコンクリート内部の鉄筋の腐食を防ぐために部材のかぶりを大きくする必要があることから、構造物断面が大きくなり部材重量が重くなり、橋脚の設置が必須となるが、UFCの適用により自重を低減したことにより、橋脚が不要な単径間構造への変更を実現した。
  3. ※3東京モノレール軌道桁:2007年に日本で初めて当社がUFCを適用したモノレール軌道桁。(2007年7月供用開始、2018年3月に供用10年の調査を実施。)昭和島駅上り待避線(2基)と車庫線(1基)に設置されている。従来の軌道桁は桁長20mのプレストコンクリート桁を標準としていたが、道路横断部などでは長大スパン(20m以上)の桁が必要となり、桁重量の低減が可能で、製作精度の向上が見込めるUFCが適用され、最大で桁長40mの軌道桁を構築した。