既存建物内を効率的に図面化する「T-Siteview®Draw」を開発

360度パノラマ画像を活用し、リニューアル工事の現地調査を迅速化

2019年3月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、全天球カメラ※1で撮影した360度パノラマ画像を基に既存建物内を効率的に図面化する手法「T-Siteview®Draw」を開発しました。これによりリニューアル工事における現地調査を迅速化し、建物管理者や利用者への影響を大幅に軽減するとともに、省人化による生産性向上に寄与することができます。

 近年、既存ストックの有効活用が求められる中、効率性や経済性の観点から既存建物の長寿命化が望まれており、リニューアル工事やリノベーション工事の増加が予想されています。これらの工事では、既存建物の管理図面が現地と異なる場合があり、工事計画時に現地調査を行うことが必要です。従来の方法では、関係者立会いのもと使用中である建物内の室内寸法や設備位置を手作業で計測しており、時間や空間の制約が発生することから現地調査の迅速化や効率化が望まれていました。そこで当社では、このような課題を解決するため、工事予定箇所の現況を360度パノラマ画像を基に図面化する手法「T-Siteview®Draw」を開発しました。

本手法の特徴は以下のとおりです。

  1. 1現地作業を最小限化し、効率的な現地調査を実現
     本手法では、全天球カメラを用いて最小限の基準寸法を計測し、360度パノラマ画像をワンショットで撮影するだけで現地調査が完了します。従来の方法との比較では準備を含めた作業時間を1/3~1/5に短縮が可能です。全天球カメラで撮影した画像があれば現地での計測漏れがなくなるため、再調査が不要となります。(図1参照)
  2. 2安全性向上とコスト低減
     本手法を用いることにより、脚立などを用いた高所での計測作業が不要となるため、安全性が向上します。また、小規模な調査であれば1名での計測作業が可能となり、省人化に伴う調査コストの低減につながります。
  3. 3補正機能により誤差を低減し、時間や場所を選ばず計測可能
     本手法での計測は、天井高等の既知寸法を用いる独自の補正機能により、画像の歪みや解像度の影響による誤差を最大でも5%程度まで低減することができます。撮影した360度パノラマ画像を基に「キュービックパノラマ画像※2」に変換し、計測対象物の起点と終点の座標をPC上で取得することができ、時間や場所を選ばずに、現地にいる感覚で計測作業をすることが可能です。(図2参照)
  4. 4 座標データを基に現地の状況をCAD図面化
     取得した座標はデジタルデータとして取得できるため、CAD図面作成の効率化が図れ、2~3日程度で平面図、展開図、天井伏図等のCAD図面が作成できます。

 今後、当社では、既存建物の現地調査に本図面作成手法を積極的に活用し、リニューアル工事の迅速化・効率化に努めてまいります。

図-1 図面化の手順
図-1 図面化の手順
図-2 キュービックパノラマへ変換した360度パノラマ画像
図-2 キュービックパノラマへ変換した360度パノラマ画像
  1. ※1全天球カメラ:
    360度パノラマ画像を撮影できるデジタルカメラ。2個の魚眼レンズを同時に使用して、1直線上、正反対の方向の画像を撮影。その後2枚の魚眼画像を合成して360度パノラマ画像として生成することができ、撮影した画像はアプリケーションソフトを使用することで水平や垂直360度に展開することができます。
  2. ※2キュービックパノラマ画像:
    撮影した360度パノラマ画像を、カメラを中心とした上下左右前後の6枚の正方形画像に分割し、正六面体に貼り付けた画像のこと。曲線を直線として表現することができ、360度パノラマ画像を元にした寸法計測を可能としています。
  3. ※3PanoMeasure2:
    株式会社ズームスケープが開発したPC用ソフトウェア。キュービックパノラマ画像を基に3次元図面作成や寸法計測を行うことができます。