建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発

セメント系材料で実大規模部材を迅速かつ高精度に自動製作

2018年12月10日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、株式会社アクティオ(社長:小沼直人)、独立行政法人国立高等専門学校機構有明工業高等専門学校(校長:高橋薫)、太平洋セメント株式会社(社長:不死原正文)と共同で、建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発しました。当プリンタは、セメント系材料をノズルから押し出しながら積層し、型枠を使わずに3Dデータから様々な形状の建設部材を迅速かつ高精度に自動製作することが可能です。
 近年、幅広い分野で3Dプリンタが普及し、これまで実現困難だった複雑な形状の部品の製作などに活用されています。しかし、建築・土木構造物では一般的に用いられる樹脂系材料等とは異なり、セメント系材料を使用するため、製作中に積み上げた重さや歪みに耐えられず、崩壊を引き起こすことが大きな課題でした。
 そこで当社らは、(1)特殊なセメント系材料、(2)ノズル、(3)プリンタシステムの開発に取り組み、これらを組み合わせた建設用3Dプリンタ「T-3DP」を完成させ、実大規模部材の製作を実証しました。(図-1参照)
 今回開発した「T-3DP」は、最大寸法が幅1.7m×長さ2.0m×高さ1.5mまでの建設部材製作が可能です。実証実験では、楕円形状でひねりのある中空の大型柱(幅30cm×長さ40cm×高さ1.3m)を8つに分割し、合計120分で製作しました。(図-2参照)また、トポロジー最適化手法(※1)を取り入れ、従来工法では実現困難であった断面が連続的に複雑変化した形状の二人掛けベンチの製作に成功しました。(図-3参照)

 「T-3DP」の特徴は以下のとおりです。

  1. 1圧送しやすく固化しやすい特殊なセメント系材料が大型建設部材の製作を実現
     開発したセメント系材料は、力が加わると柔らかく流動するため圧送しやすく、一方、ノズルから吐出後は、形状が崩れにくく短時間で固化する特殊な性質を持っており、一度に高く積層できるため、大型建設部材を製作することが可能です。
  2. 2特殊ノズルが吐出量を一定に保ち、複数部材の同時製作も可能
     開発した特殊ノズルは、吐出量を常に一定に保つことができます。そのため、建設工事で使用されている一般的な脈動(※2)を伴うポンプとの組合せが可能となり、今後、実現場への展開が可能です。また、ノズル先端から材料が垂れることを防ぐ仕組みになっており、複数部材の同時製作にも対応できます。(図-4参照)
  3. 3迅速で高精度な自動製作を実現するプリンタシステム
     本プリンタでは、制御用PCで読み込んだ3Dデータに基づき、製作物の大きさに応じてノズルから吐出するセメント系材料の量を自動で制御することができます。プリンタシステムが特殊ノズルを自由に移動させ、セメント系材料を適切な速度(最速500mm/秒)で正確に積層できるため、実大規模の建設部材を高精度に自動製作することが可能です。

 今後、当社は、本プリンタを導入した様々な建設部材の製作や、現場での大型構造物の施工を実現するため、補強方法や品質管理手法、構造的な評価技術の確立などの課題解決に取り組み、積極的に研究開発を進めてまいります。

図-1 建設用3Dプリンタ「T-3DP」の概要
図-1 建設用3Dプリンタ「T-3DP」の概要
図-2 中空の大型柱製作状況
図-2 中空の大型柱製作状況
図-3 トポロジー最適化構造の実現
図-3 トポロジー最適化構造の実現
図-4 複数部材の同時製作
図-4 複数部材の同時製作
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  1. ※1トポロジー最適化手法:構造分析、感度解析、モデル変更を繰り返しながら不要な材料を削り、最終的に軽くて強い構造になるような形を見つける設計手法のこと。
  2. ※2脈動:ポンプの機械的な機構に起因して送り出し動作が脈打つように周期的に寸断されること。押出し積層にとって脈動に伴う材料供給の乱れは積層精度を乱し、崩壊を引き起こす致命的な要因となります。