愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所が、BELSの5段階評価で最高ランクを獲得

一次エネルギー消費量を85%削減し、公共研究施設で国内初の「ZEB(Nearly ZEB)」認証取得

2018年11月16日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、現在施工中の「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」※1において、この度、建築物省エネルギー性能表示制度(Building Energy-efficiency Labeling System、以下「BELS」という。)※2で、5段階評価の最高ランクを獲得すると同時に「ZEB(Nearly ZEB)」※3認証を公共研究施設において国内で初めて取得しました。

 日本の温室効果ガス削減目標である2030年26%削減(2013年比)を、確実に達成するためにZEB普及は喫緊の課題です。国の施策である「エネルギー基本計画」や「エネルギー革新戦略」においてもZEB普及を推進しており、2014年よりBELSでの認証制度が開始され、2016年よりZEBのレベルに応じた認証取得が可能となり、建物の省エネルギー性能を定量的に把握することで、個別の建物が持つ環境性能を明確に表示する認証制度が整備されました。
 一方、2015年には、建築物の設計時における一次エネルギー消費量に応じて、ZEB Ready、Nearly ZEB、『ZEB』の3段階でZEBが新たに定義※4され、国としてのZEBロードマップが提示されると共に、設計ガイドラインの作成が開始されるなど、国内でZEBの普及展開が加速されています。

 当社は市場性のあるZEBの実現を目指した取り組みを進めており、こうした取り組みの一つとして、愛知県が本事業の特色としている公共施設で全国トップクラスのZEBを実現するため、省エネ・創エネ設備として、以下のようなシステムを導入しました。

  1. 1

    効率の高い熱源システム「2温水回収ジェネリンク」
    温度帯や流量の異なる2種類の排温水を1台で効率的に回収可能な排熱投入型ガス吸収冷温水機を採用した熱源システム。ガス燃料消費の削減を実現

  2. 2

    井水熱利用空調設備
    未利用エネルギーである井水を利用した井水熱利用ヒートポンプチラーや水熱源ビル用マルチエアコンを採用。空調設備のエネルギー消費量の削減を実現

  3. 3
  4. 自動環境制御システム「T-Zone Saver」
    人の在席状況を検知して照明・換気を自動で制御し、省エネルギーを実現
  5. 4
  6. 太陽光発電システム
    屋上や地上、南壁面の一部に従来型の単結晶型太陽光発電設備を採用。南壁面にはシースルー型の太陽光発電設備の採用により、諸室からの眺望、採光を確保し、デザインにも配慮した建物を実現

 これらの設備の導入などにより、一般建物に比べて、一次エネルギー消費量を57%削減するとともに、太陽光発電で28%のエネルギーを創出することで、全体で85%削減(BEI = 0.15※5)を達成し、「ZEB(Nearly ZEB)」認証を取得しました。
 当社では、今後も環境に配慮した社会の実現を目指し、様々な省エネルギー技術の開発を進めるとともに、この評価制度を活用し、発注者のニーズに合致した省エネルギービルへの提案に取り組んでいきます。

愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所 (完成イメージ)
愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所(完成イメージ)
BELSでの Nearly ZEB を認証取得
BELSでの Nearly ZEB を認証取得
図1. 従業員作業状況見える化ツールの概要
ZEBチャート(一次エネルギー消費量を57%削減、太陽光発電により28%創エネで、85%削減を達成)
  1. ※1 建物概要
    建物名称 愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所
    建設地 愛知県名古屋市北区辻町字流7-6
    階数 地上4階
    発注者 愛知県
    実施設計・施工 大成建設(株)
    基本設計・実施設計監修・工事監理 (株)久米設計
    延床面積 8147.46m2
    工期

    2017年10月2日~2019年12月27日
    (引渡しは2019年1月31日、業務開始は2019年4月1日、供用開始は2020年4月1日の予定)

  2. ※2BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)
     国土交通省が主導する建築物の省エネルギー性能に特化した、第三者による認証制度です。国が定める計算方法に則りBEI(省エネルギー性能指標)値を算出し、その値によって5段階で☆の数が決定します。最高ランクの☆5の中でも更に省エネルギー性能に優れた建物がZEBとして認証されます。
  3. ※3Nearly ZEB(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)

    「ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物」であり、創エネルギー分を除き基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量を削減し、創エネルギー分を加えて基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満削減した建築物。

  4. ※4

    ZEBの定義
     2015年12月17日に経済産業省資源エネルギー庁より公表されたZEBの定性的な定義として下記の考え方が示されました。
     ZEBとはネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、創エネルギーを導入することによりエネルギー自立度を高め、年間一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物です。
     国の新定義としてのZEBは、一次エネルギー消費の削減量が50%以上であるZEB Ready、削減量が75%以上のNearly ZEB, 削減量が100%以上の『ZEB』の3種類がZEBに該当する。創エネルギーは敷地内(オンサイト)のみを対象とし、使用エネルギーからはコンセント負荷を除く等の規定が定められており、建物毎の計画値の算出が必要となります。

    ZEBの定義 図
  5. ※5今回、太陽光発電設備は、余った分だけ逆潮流(売電)する計画。ZEBの定義では、売電を行う太陽光発電設備による創エネを計算に考慮して良いため、BEI(Building Energy Index=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量)が0.15でZEBレベルはNearly ZEBとなります。ただし、BELSでは、売電を行う太陽光発電設備はBEI値から除かなければならないため、BEIは0.43(BELSの表示上は、「設計一次エネルギー消費量から57%削減」)となっています。