塩素化エチレン類を分解する浄化菌の効果を長く持続させる浄化材「TM-BioLong」を開発
汚染域へ浄化材を注入する回数を大幅に削減し、コストも低減
2018年10月11日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、塩素化エチレン類※1を浄化する特定浄化菌の効果を長期的に持続させる浄化材「TM-BioLong」を開発しました。本浄化材を用いることにより、汚染域における浄化効果を持続させ、浄化材の注入回数を大幅に削減できコストの低減が可能となります。
近年、塩素化エチレン類による汚染地下水の原位置浄化対策として、汚染帯水層(汚染地下水を含む地層)に井戸や注入管を設置し、浄化菌の増殖を促す有機物を主成分とする浄化材を注入する技術が普及しています。しかし、この方法は増殖した浄化菌を一定期間留めリバウンド現象※2を防止するため、繰り返し浄化材を注入する必要があります。また、従来から市販されている効果の持続性を高めた油脂系浄化材は水より比重が軽いため、帯水層の下部に留まりにくいなどの課題がありました。
そこで当社は、汚染帯水層で浄化菌の増殖を促す有機成分を緩やかに放出する特殊微粉樹脂を配合した浄化材「TM-BioLong」を開発し、この度、実際に汚染サイトにて検証を行いました。
本浄化材の特徴と市販浄化材との検証結果は以下のとおりです。
特徴
- 1特殊微粉樹脂を含み、水と容易に混合できるペースト状の浄化材で、観測井戸や注入管から広範囲の汚染帯水層に供給可能。
- 2特殊樹脂は水より比重が重く、帯水層下部の汚染源付近に供給できると共に、微粉樹脂から有機物が徐々に放出されるため、1年以上に渡り浄化菌の増殖を促す効果が持続。
- 3浄化材の注入回数を大幅に低減することが可能。
検証結果
比較的有機物の分解が生じやすい実汚染帯水層において持続性試験を実施した結果、従来の市販浄化材がほぼ50日で消滅したのに対して、本浄化材の特殊樹脂は約200日経過後でも初期の40%程度が地盤内に残存しており、1年以上は微生物の増殖促進効果を持続できることを実証しました。
浄化菌を利用した汚染地下水の浄化では、浄化菌を速やかに増殖させ、長期的に活性を持続させることが重要です。そのため、今後、当社ではこれまで5年以上の使用実績のある即効性の浄化材「TM-BioQuick※3」と、今回新たに開発した「TM-BioLong」を組み合わせ、当社が実施する浄化工事に適用していくとともに、当社以外の浄化工事にも展開できるよう外販を視野に販路を構築していく予定です。
- ※1塩素化エチレン類は、エチレンに塩素を付加して合成した液体。トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンが金属部品の洗浄剤や溶剤として広く使用されてきたが、有害性が確認されたため環境規制物質に指定されています。
- ※2リバウンド現象は、地下水の浄化後に帯水層下部のシルト・粘土層などに付着している汚染物質(塩素化エチレン類)が地下水に再溶出して、基準値達成後に地下水中の塩素化エチレン類の濃度が再び基準値を超過することです。浄化後の地下水モニタリングを実施した際に、汚染物質の濃度が基準値を再度上回る現象が生じることが原位置浄化技術の課題となっています。
- ※3「TM-BioQuick」は有用菌を迅速に増やす効果があるホップ成分を含むビール酵母エキスを配合した液状の即効性浄化材です。可溶性で帯水層に容易に注入することが可能です(通常、100~200倍に希釈して使用します)。地下水中のpHを中性域に保つ成分も配合しているため、浄化菌の増殖が促進され、3ヶ月程度で十分な浄化効果を発揮できます。