ICTを活用した現場打ちコンクリートの「打重ね管理システム」を開発

打重ね状況をリアルタイムに把握・管理し、最適な施工を実現

2018年10月1日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、現場打ちコンクリート工事管理システム「T-CIM®※1/Concrete」の機能を拡張し、新たにコンクリート打重ね状況をリアルタイムに把握できる管理手法「打重ね管理システム」を開発しました。本システムにより、計画段階での最適な打重ね時間を考慮した打設手順の選定や、工事全体の打設状況の迅速な把握と適切な管理が可能となるため、現場打ちコンクリート工事の更なる品質と生産性の向上を図ることができます。

 現場打ちコンクリート工事では、2層以上に分けて生コンを打設する際に、固まり始めたコンクリートとその上層に打設するコンクリートの境界面にコールドジョイント※2が発生し、構造物の強度低下を招くなど品質上の問題となることがあります。そのため、従来の現場では、各施工エリアで工事担当者が、打設の開始・完了時刻から打重ね時間を計算し、野帳に記録して管理していました。しかし、この方法では複数施工エリアで同時打設する場合、工事全体の打設状況をリアルタイムに把握、共有できないため、打重ね制限時間内での打設が困難となる要因となっていました。また、打設完了後に手書き記録に基づくデータ整理や帳票等の提出書類の作成に手間がかかるという課題がありました。

 そこで当社は、これらの課題解決のため、インターネット上のクラウドサーバーを活用し、いつどこでもタブレット端末等によりコンクリートの打重ね状況をリアルタイムに把握・管理し、情報共有できる仕組みを構築しました。(図-1参照)。

図-1 打重ね管理システムの概要図(コンクリートポンプ車2台の場合)
図-1 打重ね管理システムの概要図(コンクリートポンプ車2台の場合)


 本システムの特徴は以下のとおりです。

    1. 1本システムでは、施工対象物の構造図に基づき、積木状の「格子要素」を基本ブロックとし、これらをグループ化した施工ブロックを用いて、コンクリートの打設手順をデータ化した打重ねモデルをエクセル表で作成します(図-2参照)。打重ねモデルの適用により、形状が複雑な梁スラブ構造やタンクなどの円形構造物でも、複雑な打設手順の設定・編集を容易に行うことができます。これにより、打設計画の段階で多くのケースを事前検討し、打重ね時間が最適となる打設手順の選定が可能となります。また、施工途中で打設手順が変更になった場合でも、それまでの施工記録を継続した状態で関連情報を入力し、様々な打設パターンにも柔軟な対応が可能となります。
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      図-2 エクセル表を用いた打重ねモデル
    3. 2タブレット端末画面上で施工ブロック毎にリアルタイムにコンクリートの打設開始、完了時刻など打設情報の記録・確認が可能で、打設や打重ね状況に応じて施工ブロックを色分け表示し、見える化できます。また、複数ポンプ車で複数エリアを同時施工する場合には、各エリアで同時に打設情報の入力が可能です。打重ねの制限時間が近づいた場合には、打重ね境界部が画面上で赤色表示され、さらにメールによる警報で注意を促がすため、施工状況の迅速な把握と適切な管理が可能となり、コンクリートの更なる品質向上につながります(図-3参照)。
図-3 打重ね管理システム表示画面【全体表示(左)、詳細表示(右)】
図-3 打重ね管理システム表示画面【全体表示(左)、詳細表示(右)】
  1. 3従来、工事担当者が個別に生コン伝票や野帳に記録していた生コンの練混ぜから打設完了までの各情報が、クラウドサーバー上で一元管理されるため、隣接する施工ブロックや各施工エリアでの打設や打重ね状況が情報共有でき、コンクリートのトレーサビリティや生コンロスの最小化など、迅速で精度の高い打設管理が可能となります。
  2. 4打設後にこれまで別途作成していた帳票等が自動作成されるため、業務の省力化、効率化を実現することができます。

 今後、当社では、現場打ちコンクリート工事に本システムの積極的な導入を図るとともに、各工種のCIM※3システムとの連携により、将来導入が予定される構造物の維持管理段階でのCIM適用に向け、更なる改良を加えていく予定です。

  1. ※1T-CIM®は、当社の土木工事作業所に導入、運用している情報通信技術を活用した施工システムと、3次元モデルを統合した独自のCIMシステムで、ダムやトンネルなど構造物に特化した「専門工種」と、どの工事にも当てはまるコンクリート工などの「共通工種」を相互に関連させ体系化したシステムです。本システムの適用により、施工情報の紐付けに最適な3次元モデルを容易に作成し、3次元モデルと連動した施工情報の入力・更新を効率的に行うことが可能となります。
  2. ※2コールドジョイント(cold joint)とは、コンクリートを打ち重ねる際の適正な制限時間を過ぎて、コンクリート打設した場合に、打設済みコンクリートの上層部と新たに打設したコンクリートが一体化しない状態が発生し、打ち重ね部分に不連続な面が生じる現象を示します。
  3. ※3CIM(Construction Information Modeling/Management)は、2012年に国土交通省が建設事業全体の生産性向上を目指して提唱した情報システムです。CIMでは、各工事の3次元モデルに、関連する属性情報を紐付けたCIMデータを構築し、建設事業フローの川上である調査計画、設計積算段階から川下である施工、維持管理段階まで、コンピュータやネットワーク上で一元的に管理しながら情報共有を図り、合意形成や設計、施工の高度化、維持管理の効率化を目指します。