地下構造物の3次元数値解析モデルを高速自動作成

解析業務の大幅な効率化・省力化により、設計・施工を合理化

2018年9月25日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、複雑な構造を有する地下構造物の設計・施工に必要となる3次元数値解析モデルの作成時間を従来の1/10程度まで高速化して自動作成できる解析手法を構築し、運用を開始しました。これにより、短期間で地下構造物の複雑な構造の把握とその施工手順を反映した合理的な設計・施工が可能となります。

 地下に構築されるトンネルや駅舎などの建設工事では、事前の地質調査が困難な場合に、施工中の地質観察、ボーリング等による前方地質探査、地盤掘削で生じる僅かな変形などの情報をもとに、地盤挙動や構造物の変形を解析して設計・施工を行います。特に、複雑な構造を有する地下施設の詳細検討には、施工に伴う構造物の状態や周辺建物、地盤への影響を把握する必要があり、地下施設の構造や地層構造、施工手順を忠実に再現した3次元数値解析モデルの活用が最適です。しかし、従来の手法では、モデル作成に多大な時間とコストを要し、また構造物構築時の施工手順を反映したモデル作成は困難といった課題があり、新しい手法構築が求められていました。

 そこで、当社は、3次元CADソフトと自動メッシュ作成機能を持つソフトを組合せ、従来の1/10程度の時間で3次元数値解析モデルを高速に自動作成させ、さらに地下施設の構造や地層構造を忠実に再現し、施工手順を反映した詳細な解析モデルを作成する手法を構築しました(図-1参照)。これにより、解析に係る業務の大幅な効率化と省力化が可能となり、工程短縮、コスト低減につながることから設計・施工の合理化を図ることができます。

 本解析手法の特徴は以下のとおりです。

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  2. 詳細な3次元数値解析モデルを従来の1/10程度の時間で高速自動作成
  3. 従来手法による3次元メッシュ作成では2次元メッシュ断面を奥行方向に引き延ばして作成しましたが、本手法では3次元CADデータを用いて3次元メッシュを自動で高速作成することが可能です。図-2のモデルの場合、従来手法では全体メッシュ作成だけで2ヶ月以上必要でしたが、本手法を用いると全体および施工手順(トンネル断面内の区分け状況)に則った局所的な範囲のメッシュ作成を約7日で行うことが可能となりました。
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  5. 地下施設の構造や地層構造を忠実に再現し、施工手順を反映した解析モデル作成が可能
  6. 従来手法では詳細な再現が困難であった地下施設や地層の構造を、本手法では3次元CADデータを用いて忠実に再現し、また施工手順を反映した3次元数値解析モデルを作成することが可能で、状況に応じた設計・施工の計画策定・変更に的確に対応することができます。
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  8. 解析モデル作成に高度なスキルが不要
  9. 従来手法による3次元メッシュ作成には、構造物の形状を簡略化してメッシュ作成時間を短縮するなど経験的な知見と高度なスキルが必要でしたが、本手法では3次元CADデータから3次元メッシュを自動で高速作成できることから、数値解析に関する特別なスキルが不要となります。

 今後、当社では、本解析手法を様々なプロジェクトや地下構造物の設計・施工の検討および施工法の技術開発などに活用し、より合理的な設計と施工品質の向上を実現するとともに、トンネルや備蓄タンクなどの地下構造物に関する新しい技術開発の迅速化を図ってまいります。

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