平成29年度土木学会賞について
2018年7月2日
大成建設株式会社
土木学会が主催する「平成29年度土木学会賞」において、下記の対象技術やプロジェクト、人物が表彰されました。
土木学会賞は大正9年に設立し、以来80余年の伝統に基づく権威ある表彰制度です。
技術賞
Ⅰグループ(個別技術)
- 『地下埋設物の影響を受けずに連絡立坑を構築する「坑内回収型上向きシールド工法」』
・概要
今回開発した「坑内回収型上向きシールド工法」は、地中深部に新設したトンネルから上向きに発進した立坑掘削用上向きシールド機を、地中浅部の既設埋設物の直下まで到達させた後、掘削した立坑内をそのまま降下させて回収する機能をもちます。これにより、地表付近の地下埋設物の影響を受けることなく立坑掘削を完成させ、近隣住民の生活環境や周辺交通への影響も最小限に抑制することができます。
大阪市東部地域の浸水対策事業である新今里~寺田町下水道幹線第1期工事において、大阪環状線に位置する3箇所の特殊マンホールの施工に、地域・環境特性を踏まえて本技術を採用しました。本施工の成果は、今後も需要の増加が見込まれる都市部でのインフラ整備事業に、地上制約条件の課題解決の一助として期待できるものとして高く評価され、技術賞に値するものとして認められました。
- 『長大山岳トンネルにおける国内最大規模の環境保全対策–新名神高速道路 箕面トンネル工事–』
・概要
本工事(箕面トンネル東工事)は、北摂地域の国定公園・自然公園等、自然環境を保全する山地部を通過する箕面トンネル(全体5km 新名神最長)の東側から約2.5kmの区間と、佐保川橋のA2橋台、本線盛土等を構築する工事です。
トンネル周辺は、河川水等を生活、農業用水に利用しており、施工に伴う水環境への影響が懸念されていました。このような環境のもと、超長尺ボーリングを高速道路トンネルとして初めて採用し、ボーリング孔を活用した穿孔振動探査法(T-SPD)の実用化より、切羽前方地質の事前把握を行いました。
さらに、非排水構造区間における大断面トンネル交差部の覆工構造の採用等、新技術の開発や積極的な活用と周辺水環境に対する負荷を抑制して、厳しい環境保全要求を克服しました。
- 『大深度シールドの掘進技術と到達技術および大深度立坑の構築技術の確立(高水圧下の砂礫層の長距離掘進および仮壁切削工法と水中到達工法とを用いた到達)』
・概要
本工事(白子川地下調節池工事)は、台風や集中豪雨によって発生する洪水を一時的に貯留するトンネル形式の調節池であり、泥水式シールド工法により調節池本体を築造し、ニューマチックケーソン工法により流入施設となる到達立坑を築造しました。
本工事では、内水圧の条件に対応できる新しい嵌合方式のリング継手をもつ合成セグメントを開発し、各種試験によりその性能と施工性を実証し適用しました。また、高水圧下の砂礫層を長距離掘進する技術や、住宅との離隔が2mという超近接条件下で大深度立坑を構築する技術、仮壁切削工法と水中到達工法を用いて到達する技術など、今後のプロジェクトにも大いに寄与できる技術を確立し、その先駆的な役割を果たした工事です。
- 『東京外環自動車道 京葉ジャンクションにおける小土被りランプ構築工事(ハーモニカ工法による上床版先行構築およびアンダーピニングによるランプの構築、大断面シールド小土被り対策工事)』
・概要
本工事(田尻工事)は、東京外環自動車道と京葉道路が交差する京葉ジャンクション(仮称)部の本線部分およびランプ部を構築する工事です。
田尻工事のうち、京葉道路をアンダーパスするAランプおよび県道市川・浦安線の路下部に躯体構築を行うDランプは、開削工法が困難なため非開削工法により構築されました。Aランプ、Dランプはともに小土被り条件下の施工であり、Aランプシールドは発進から約100mの小土被り区間において、地表面の変状抑止と浮上り防止を目的とした対策工を実施し、Dランプは地表面の変状抑止対策として、ハーモニカ工法とアンダーピニング工法を併用して施工を行いました。
どちらも供用中路下の施工でしたが、路面沈下量を最小限に抑え、一般交通に影響を与えることなく工事を完了することができました。
Ⅱグループ(プロジェクト)
- 『日本初の営業線直下における4線地下式での線増連立事業~都市高速鉄道第9号線の完逐~』
・概要
本事業は、小田急電鉄小田原線の代々木上原駅付近から梅ヶ丘駅付近までの約2.2kmにおける道路と鉄道の連続立体差化と線路の複々線化を一体的に行うものです。
当社では、このうち下北沢駅を含む645m区間において、4線地下式で鉄道トンネルを構築する工事を担当しました。
1期工事では営業線直下で直径約8mの円形トンネルをシールド工法により構築し、2期工事では地下化した営業線直上で開削工法により箱型トンネルを構築するという、日本初となる非常に難易度の高い工事を完成させました。
国際活動奨励賞
- 『内田 裕之 次長(国際支店 土木部 積算室)』
- 世界各地のプロジェクトに従事し、土木技術の発展に寄与し、今後も現地技術者の育成および社会資本整備で国際貢献が期待されるとして表彰されました。
国際活動協力賞
- 『何 海明 課長代理(関東支店 土木部 土木室)』
- 赴任先各国の社会資本インフラの整備発展や人材育成に尽力し、今後も海外事業に従事し国際貢献を果たしていくことが期待されるとして表彰されました。
大成建設では、今後も土木工学の進歩発展あるいは社会資本整備に寄与できる、安全・安心のための付加価値の高い技術を提供してまいります。