安全性・快適性と省エネルギーを両立した給気ユニット「T-DC Air Diffuser」を開発

ドラフトチャンバーを導入するすべての施設に有効

2018年5月25日
大成建設株式会社
ヤマト科学株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、ヤマト科学株式会社(社長:森川智)と共同で、研究・実験施設などで設置されるドラフトチャンバーの安全性・快適性と省エネルギーを両立した給気ユニット「T-DC Air Diffuser」※1を開発しました。本ユニットの導入により、室内の温湿度環境を維持しつつ、導入外気の処理に費やす空調エネルギーを抑制することが可能となり、研究者の安全性・快適性の確保とエネルギー多消費型施設の省エネルギー化を両立しました。

 研究・実験施設で化学実験等により発生する有害な気体、揮発性の有害物質、有害微生物などを扱う際、室内への漏洩を防ぐため局所排気装置としてドラフトチャンバーを使用します。通常、ドラフトチャンバーを使用する部屋では、排気と同時に外気導入を行い、室内の圧力変動を防止しますが、外気を室温レベルの温湿度に制御し室内に吹出すため、外気処理に多大な空調エネルギーを消費していました。このような理由から、ドラフトチャンバーを多数設置している研究・実験施設では、研究者の安全性や快適性を維持するために多くのエネルギー消費が必要でした。また、従来から適用されている、外気を温湿度処理せずにそのままの状態で直接吹出す「エアカーテン式ドラフトチャンバー」では、ドラフトチャンバー直上から給気する機構のため、ドラフトチャンバー作業面で、予防規則※2に基づく必要な気流(風速)を確保するためには、大きな給排気量を設定しなければならず、余分なエネルギーを消費していました。

 そこで、当社は、ヤマト科学株式会社と共同で、室内の空調された空気を事前に混合し、外気をほとんど温湿度処理せずにドラフトチャンバー上部から吹出しても室内の温湿度に影響をあたえず、かつ研究者の安全性・快適性を維持した給気ユニット「T-DC Air Diffuser」(図-1、写真-1参照)を開発しました。

「T-DC Air Diffuser」の特徴は以下の通りです。

  1. 1研究者の直上となるドラフトチャンバー上部に、吹出口を有する給気ユニットを配し、内部にパンチングメタル整流板及びグリル状吹出口を設置することで、予防規則に定められた条件を満たす空気の乱れの少ない気流を作業面へ供給することができます。(図-2、写真-2参照)
  2. 2空調された室内空気を誘引するため、給気ユニット前面に室内空気吸込口、ユニット内部に誘引開口を設けました。誘引開口が給気抵抗となり、ユニット内に負圧を生じさせ、室内空気を誘引させる仕組みです。これにより、給気ユニット吹出口で外気と室内空気を混合して吹出すことができ、外気処理に余分なエネルギーを費やすことなく、研究者の安全性・快適性を確保することができます。(図-2参照)
  3. 3本給気ユニットは、ドラフトチャンバー本体とは切り離された単独装置のため、既設ドラフトチャンバーの改修工事や他メーカーのドラフトチャンバーにも適用することが可能です。

 今後、当社は、ヤマト科学株式会社と共同で、本給気ユニットを有害物質などを扱うような新設・既設の研究・実験施設等に対して積極的に展開します。

  1. ※1T-DC Air Diffuser
    独自開発のドラフトチャンバー(DC)設置型の空気拡散ユニット(Air Diffuser)
  2. ※2予防規則
    研究者の安全確保のため、ドラフトチャンバー作業面で、有機溶剤中毒予防規則(作業面風速0.4m/s以上)、特定化学物質障害予防規則(作業面風速0.5m/s以上)に基づく状態を確保する必要があります。
図-1「T-DC Air Diffuser」概要図 写真-1,試作機による実証実験の様子
図-2 給気ユニット詳細図 写真-2,ドラフト作業面での風向風速測定試験