生態系に配慮した水質保全システム「アクアトープ®」の機能を拡張

強度を向上させた植栽基盤を現場に直接構築し、短工期・低コストを実現

2018年5月25日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、2013年に開発した生態系に配慮した水質保全システム「アクアトープ®」に改良を加え、水生植物の土台となる植栽基盤の強度を向上させる技術を開発しました。これにより急斜面等の地形でも、現場に直接植栽基盤を構築できるようになり、「アクアトープ®」の適用条件が拡大するとともに、工期の大幅な短縮とコスト削減が可能となります。

 「アクアトープ®」は、吸着材(機能炭)を利用した「植生マット」と「吸着装置」で構成されており、水中の富栄養物質の吸着・除去を行うことで、藻の大量発生を防ぐ技術です。当社はこれまで「アクアトープ®」を用いて水辺環境の安定的な水質保全を実現してきました。しかし、従来の植栽基盤は水生植物が根付くまでの数ヶ月間、圃場で事前に栽培する必要があり、また植栽基盤の固定が困難な急斜面には設置できないという課題がありました。そこで、当社はこれらの課題を解決するため「アクアトープ®」の機能を拡張させ、実証試験によりその有効性を確認しました。

 今回、機能拡張した技術の特徴および実証試験の結果は以下の通りです。

  1. 1強度を向上させた植栽基盤を現場に直接構築が可能
     開発した植栽基盤は、従来の主材料(砂と吸着材)に、中性特殊固化剤を混合することにより強度が向上し、現地が急斜面や水流のある場所であっても植栽基盤を現場に直接構築することが可能となります。
  2. 2親水性高分子の混合により保水性を維持し、安定した植栽が可能
     強度向上の一方で、今回の植栽基盤には親水性高分子を混合するため、保水性が維持できます。これにより水生植物の根が植栽基盤内部に十分伸張し、安定した植栽を可能とします。
  3. 3短工期・低コスト化を実現
     水生植物は植栽基盤設置後に植えつけることになるため、事前生育が不要になります。このため、工期は従来の3~6ヶ月から約3日へ大幅に短縮でき、コストは従来と比べ約3割削減できます。
  4. 4水生植物の順調な生育状況を確認
     日本大学生物資源科学部の大澤教授の学術指導と箱根植木株式会社の協力のもと、本技術実証を行い、日本大学湘南キャンパス内に小型の人工池を造成しました。試験開始から約8ヶ月が経過しましたが、水生植物は順調に繁茂しており、水生植物の生育状況と長期にわたる安定した水質保全効果などを引き続き検証する予定です。

 今後、当社では、これらの技術を積極的に提案し、適用することで、都市部の再開発や教育施設などで生態系と共存した豊かな水辺環境の創出を目指します。

実証実験(約10m2)での生育状況
実証実験(約10m2)での生育状況