高性能流動化コンクリート「T‐エルクリート」を開発

粉末パックの流動化剤・増粘剤により、品質と生産性を向上

2018年4月9日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、一般的に使われているJIS規格コンクリート※1に建設現場で粉末パックの流動化剤・増粘剤を添加するだけで流動性を向上させ、高密度配筋の充填にも対応可能な流動化コンクリート「T‐エルクリート」※2を開発し、その有効性を確認しました。本技術の適用により、建設現場で使用するコンクリートの品質と生産性を向上させることが可能となります。

 鉄筋コンクリート構造物は、型枠内部へのコンクリート充填により構造体を構築することから、特に複雑な形状や鉄筋量の多い構造物では、通常のコンクリートに比べ流動性の高いコンクリートを使用することが効果的です。しかし、流動性の高いコンクリートを建築工事に適用する際には建築基準法の大臣認定が必要となり、通常申請から認可まで数ヶ月間を要します。また、これらのコンクリートは材料コストが高く、型枠側圧が大きく作用するため、漏れのない型枠工事の実施や、ポンプ圧送時の圧力が大きくなるため、ポンプなどへの負担が大きいなどの課題がありました。
 そこで、当社は、建設現場でコンクリートの打込み直前に計量不要な粉末の流動化剤と増粘剤を添加するだけで、従来の中流動コンクリートと同等のスランプフロー45cm〜55cmを確保できるまで流動化した「T‐エルクリート」を開発し、当社技術センター内の実験施設の新設壁や増打壁・柱など約300m3に適用し、その有効性を確認しました。

「T‐エルクリート」の特徴は以下のとおりです。(仕様比較表参照)

  1. 1流動性の向上により、充填不良リスクを回避し、コンクリートの品質を向上
     本技術では、JIS規格コンクリートの打込み直前に、計量不要な粉末パックの流動化剤・増粘剤をミキサー車に投入、混合することで、高い流動性を実現します。また、コンクリートの材料分離を生じることなく、良好なポンプ圧送性と型枠への充填性を確保できます。このため、複雑な形状や高密度配筋など充填が困難な部位への適用により、充填不良のリスクを回避し、コンクリートの品質向上が可能となります。
  2. 2現場作業の省力化により、コンクリート工事の生産性を向上
     本技術は、あらかじめ定量の流動化剤・増粘剤をパッキングした粉末パックを使用するため、従来の液体混和剤の使用時に必要な現場計量が不要となります。また、水セメント比を変化させず流動性のみ一時的に高めるため、強度に影響を及ぼすことなく、充填が困難な部位など必要な箇所にのみ適用が可能です。そのため、現場での状況に応じて作業手間を省くことができ、コンクリート工事の生産性が向上します。
  3. 3大臣認定が不要で、材料コストを低減
     本技術は、大臣認定が不要なJIS規格コンクリートに適用するため、様々な条件の建設工事にも迅速に対応できます。また、従来の流動性の高いコンクリートと比較して材料コストを低減でき、調合により最大で1m3あたり2割程度のコスト低減が可能です。

 今後、当社では、本技術を高密度配筋部や壁・柱の脚部などを対象に、コストアップを抑え、充填不良リスクを回避する技術として主に建築工事に広く展開するとともに、将来増加が見込まれるリニューアル工事での増打ち・後打ちの壁・柱や土木工事などに対しても適用を図っていく予定です。

  1. ※1JIS規格コンクリートは、JIS A 5308に基づいて工業製品として品質が確保されるよう標準化されたコンクリート。生コンの種類が普通、軽量、舗装、高強度に区分され、呼び強度、スランプ、粗骨材の最大寸法の組合せが決まっている。本件では、使用頻度の高いレディーミクストコンクリートに適合する呼び強度27〜42、スランプ18〜21cmの汎用的なコンクリートを示す。
  2. ※2「T‐エルクリート」は、1990年代後半に当社が開発した高性能流動化コンクリートのパイオニア「エルクリート」を、中流動コンクリートのニーズに応えて改良させた技術です。
建設現場での製造状況(粉末パック袋は投入後分解)
建設現場での製造状況(粉末パック袋は投入後分解)