鉄筋コンクリート構造物の破壊プロセスを解明するブラインド解析コンペを開催

社内構造技術者のスキルアップと予測解析の精度向上を目指す

2018年3月16日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:村田誉之)は、構造解析に携わる技術系社員のスキルアップと予測解析の精度向上を目的として、鉄筋コンクリート梁の破壊状況を対象とした「ブラインド解析コンペ※1」を開催しました。

 柱や梁に用いる鉄筋コンクリート(以下、RC)部材の構造設計を行う際、国内外の学会などの提案式が適用されています。これらは安全側の評価として有効ですが、RC部材の破壊状況を必ずしも精度良く予測できるものではありません。そのため、技術者が様々な条件に対応して最適な構造設計を行うには、安全性を評価した設計手法の習得とともに、「部材がどのように壊れるのか」という部材性状を正しく予測する能力が求められます。

 そこで、この度、当社技術センターにおいて、RC構造物の破壊現象に対する構造技術者の理解を深め、構造解析の予測精度向上を図るため、第一弾として「ブラインド解析コンペ」を実施しました。本コンペを、今後、土木・建築分野の社内構造技術者間での相互理解の深耕や、世代間における技術継承、若手育成の場として活用し、全社的な更なる技術力向上を目指します。

【コンテスト概要】

■開催日
2018年3月14日(水)
■競技対象
試験体:実大規模RC梁(断面寸法:600×900 mm、全長:5,250 mm)
(破壊現象の詳細な観察、状況把握に適した単純な試験体を選定)
■競技内容
試験体の破壊状況を、破壊に至るまでのプロセスを予測する高度な解析(非線形有限要素解析※2)で予測し、実験との比較によりその精度を競う
■参加チーム
技術センター、原子力本部、設計本部および土木本部の社内各部署から応募した個人参加者を含む16チーム計43名、新入社員から再雇用社員までの幅広い年齢層で構成
■実施スケジュール
  • 参加チームによる事前解析のポスターセッション
  • 構造実験棟での載荷実験(10MN載荷試験機使用)
    実験中に会場のモニター上で解析と実験とを逐次比較し、参加者はひび割れの発生から試験体の破壊までを詳細に観察し、状況を把握
  • 実験終了後、解析と実験結果を比較・検証のうえ採点し、優秀者を表彰

(採点項目/

  1. 1解析への取り組み:目的、解析の工夫点、表現力=30点満点
  2. 2破壊強度の予測精度(最大荷重点)=10点満点
  3. 3ひび割れ状況:実験と解析結果の外観比較=10点満点

の合計50点満点で採点、各評価項目別と総合評価で優秀者を表彰)

□結果
 各評価項目において、高得点を獲得した設計本部のチームが総合1位となりましたが、総合2、3位とは僅差での選出であり、各チームとも高レベルでの争いとなりました。

 今後、当社では、この度得られた知見を大学や研究機関などに広く公開するほか、より複雑な構造物を題材としたコンテストを企画し、また、社外にも参加を呼びかけ、これらの活動を通じて、建設業界の構造技術継承と更なる技術力向上に貢献してまいります。

  1. ※1ブラインド解析コンペ
     提示された実験条件に基づき、事前に解析で結果を予測し、その後実験との比較により、解析精度などを競うもので、高精度の数値解析を通じて、構造物性能の改善・向上につなげることが最終目的となっています。
  2. ※2非線形有限要素解析
     構造物の変形・強度などの挙動を数値解析する手法の一つで、構造物を細かい要素に分割して、各要素の特性を元にして構造物全体の挙動をコンピューターで解析する方法。
図1 実験・解析で対象とするRC梁試験体
図1 実験・解析で対象とするRC梁試験体
図2 破壊時ひび割れ発生状況の比較事例
図2 破壊時ひび割れ発生状況の比較事例
写真1 載荷実験状況
写真1 載荷実験状況
写真2 ひび割れ発生状況
写真2 ひび割れ発生状況
写真3 試験体破壊状況
写真3 試験体破壊状況
写真4 表彰式
写真4 表彰式